第112話 十年間の闇
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るように久水に食ってかかる。
「知りませんわ、そんなこと。ワタクシとしてはむしろ、あなたの方が詳しく存じていると思っておりましたのに」
甲侍郎さんにどういう意図があったのかは知らないが、救芽井には全く例の事情を教えていないことは確かなようだ。
十年間の闇。そんな単語を聞いて、あの荒野の景色と血の色を思い起こせるのは、この場には俺しかいないのだろう。
後は――
「……」
――遠い向こう側の客席で、何も言葉を交わさないまま、カロリーメイツをかじっているだけの「当事者達」くらいだろうな。
ノートパソコンで何かの操作をしている所長さん。その右隣で、目を閉じて腕を組み、背筋を伸ばして静かにサドンデス開始を待っている伊葉さん。左隣りに座り、仲間に入りたそうにこちらを見ている四郷。
そして……三人より上の席に踏ん反り返り、伊葉さんに憎々しげな視線を送る瀧上さん。
彼は――これから始まる第三課目を、どう見るのだろう。
そんな先行きが不安になるような考えが、ふと頭を過ぎった時――
『侵入者発見! 侵入者発見! セキュリティシステム起動! セキュリティシステム起動!』
「……うおッ!?」
「――な、何!? 警報っ!?」
「え、ええぇえ!? し、侵入者って、なんなんっ!?」
「侵入者……ですの……!? この研究所に!?」
「まさか! こんな山奥の研究所に侵入者だと……?」
――突然グランドホール全体に轟いた、大音量の警報。その轟音に、この空間にいる全員が目を見張る! ……つーか、警報の音量デカ過ぎんだろッ! 心臓飛び出るかと思ったわッ!
いや、しかも驚いてるのは全員じゃない! 向こうは瀧上さんと四郷が僅かに反応して辺りを見渡しているくらいで、所長さんと伊葉さんは何事もないかのように涼しい顔をしている。
――まるで、最初から「わかっていた」かのように!
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