第112話 十年間の闇
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然だったのかも知れない。俺は資格者でこそないが、「救芽井エレクトロニクスの公認」で着鎧甲冑を所有してるからセーフなのだろうか。
……だが、救芽井に迫られた茂さんは「違う」と言っている。普段なら、救芽井に声を掛けられただけでも変態化して舞い上がっていたであろう局面で、こうまでシリアスに返しているあたり、恐らく嘘はついていないのだろう。――我ながら判断基準がえげつないな。
「ワタクシが同サインを教わったのは、お兄様ではなくってよ。あなたのお父上――救芽井甲侍郎さんでしたわ」
「ええっ!? お、お父様がっ!?」
そこへ横槍を入れるように口を挟む久水。その一言に、救芽井はさらに驚きの声を上げた。
恐らく、ディフェンドゥーズサインの「他人に教えちゃダメ」というルールも、甲侍郎さんが作ったものなのだろう。その甲侍郎さん自身が直々に久水にサインを教えた……ということなのだろうか。
なんともあからさまな矛盾が生じているようにも見える――が、僅かに思い当たる節があった。
「あのさ、久水。お前がそのディフェンドゥーズサインってのを教えてもらったのは、いつ頃の話なんだ?」
「え? ……そうざますね、今年の浅春の頃でしょうか。お兄様が資格取得のためにアメリカへ渡った際、その旅路に秘書として同行していた時に、救芽井エレクトロニクス本社にて甲侍郎さんが伝授して下さりましたのよ。確か――「十年間の闇」にようやく決着が付けられる――とか、嬉しそうに語っていらっしゃいましたわ」
……「十年間の闇」、それにディフェンドゥーズサインか……。なんつーか、刻一刻と所長さんの危惧する事態に転がって行ってる気がしてならない。このまま、第三課目がプログラム通りに進行されることも期待しない方がいいのかもな。
「立春を過ぎた頃って……たった四ヶ月程度じゃない! ディフェンドゥーズサイン全種を習得するには丸一年掛かるはずだし、私だって半年以上は――」
「あら、そんなに掛かるものでしたの? ワタクシは二日で全て覚えましたのに」
あっけらかんと言い放つ久水。バタリと卒倒する救芽井。この間、僅か三秒。
「ちょ、救芽井っ!? ……もー久水、あんまりいじめたらあかんやろっ! この娘、胸とオツムしか取り柄がないんやから!」
目を回して唸っている救芽井を、横並びになっている席に寝かせ、頭を優しく撫でている矢村。やってることは「面倒見のいいお姉ちゃん」かも知れないが、言ってることは完全に「いじめっ子」じゃないか。
「もっとたくさん取り柄はあるわよっ! 龍太君の前でなんてこと言うのっ! だいたい、十年間の闇ってなんなのよ!?」
あんまりな矢村のイジり方に堪えかねたのか、救芽井は涙目になって飛び起き、今にも泣き出しそうな顔で、八つ当たりをす
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