暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第110話 着鎧甲冑のお仕事
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
じゃ世話ないよなッ!
 こっちの電気ショックが終わって以降、向こうの様子は一切見ていないが――もう、四郷がどんなスゴイペースで救命処置を行っていようが、構うもんか。あの娘はあの娘、俺は俺だ!

 ――そして、唇型マスクと柔らかな二本の角(に詰められた酸素)を用いた人工呼吸も行い、心肺蘇生法のサイクルを繰り返していく。
 この作業は、本来なら救急隊が駆け付けて来るまで永久に行わなくてはならない。流れが途絶えれば、救助対象者の生存率は急速に低下することになる。伊葉さんの合図が来るまで、この流れを繰り返して行かなくちゃならないわけだ。
 ……よし、どこまで持つかはわからんが……やったるかッ!

 ――俺と四郷が同じ作業に突入してから、どれくらい経ったのだろうか。何十回というサイクルをただひたすらにこなし続け、伊葉さんの終了を知らせる合図を待つのみという現状だが、四郷は機械の身体ゆえか疲弊する気配がないらしく、息遣いが全く聞こえて来ない。

「あれから随分経つわね……いつまで続けるつもりなのかしら。本来ならとっくに救急隊が来て、救助活動は引き継がれてるはずなのに……!」
「ひたすら続けさせ、持続力を測ろうという考えかも知れんが……まずいな、あれでは一煉寺龍太のスタミナが……!」
「りゅ、龍太……」
「――心配ありませんわ。ワタクシの愛する龍太様が、こんなことに屈するなど、ありえないざます」

 一方、俺は客席の皆が言う通り、現状のペースを維持するのがほぼ不可能、と言いたくなるところまで来ていた。酸素の詰まった二本角もすっかり萎んでしまい、垂れた犬耳のようになってしまっている。男の犬耳とか誰得なんだよ全く……。

 おかげで人工呼吸は自分で吸い込んだ空気を使わなくてはならなくなり、胸骨圧迫の時も息は絶え絶えになっていた。

「ハ、ハァッ……! ハァッ……く、くそっ……!」

 俺がヒィヒィ喘いでいる間も、四郷の方からは何の声も聞こえて来ない。様子こそ見れてはいないが、涼しい顔で流れ作業を繰り返すようにサイクルをこなしている姿は容易に想像できる。

 くそっ……やっぱりダメなのか!? 所詮、生身の人間が機械の身体に勝とうってのが無茶だったってのかよ!?
 それとも、俺だから……? ち、ちくしょうめッ……!

『試験終了! 各自、活動を停止せよ!』

 ――その時だった。やるべき事を全てやり尽くし、それでも届かなかったであろう俺にトドメを刺さんと、伊葉さんのアナウンスが響き渡ったのは。

『二人とも、長い時間の中でよく頑張ったわね。……さて、伊葉氏。判定をお願いします』

 いつになく柔らかい口調の所長さん。その優しげな声には、どのような意味が隠れているのだろうか。心配そうにこちらを見守る皆の表情に釣られて、俺
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ