第110話 着鎧甲冑のお仕事
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電極パッドの装着だな。
俺は早速、用意した機械の箱から、管に繋がれた長方形の白いパッドを取り出し――人形の身体を見遣る。
……ここで重要なのは、パッドと肌の間に隙間を作らないこと。要するに、服などが邪魔なら脱がさなくてはならないのである。
本来、女性が対象であるなら倫理的な理由で、女子トイレなどに連れ込んでから行うのだが……今はその過程を審査する試験である以上、この身体を移動させることはできない。
つまり、その……脱がすのか? 本人の前で? ――ええい、迷うな止まるな戸惑うな! ここが正念場だぞ一煉寺龍太ッ!
俺は気まずさを全力で押し殺し、門外不出の特盛マウンテンを本邦初公開する覚悟で、人形の上着を左右に開き、胸元を一気にはだけさせる!
「いやぁぁあんッ!」
「久水さん落ち着いて! アレは立派な救命活動だから……仕方ないのよッ……! なんだか腹が立つけど、仕方ないのぉッ……!」
「ちょっ、あんたが腹立てたらあかんやろっ! ……まぁ、アタシもやけど……」
「一煉寺龍太ッ! 貴様人の妹をーッ! 責任取れ責任ッ!」
後ろの淫らな叫びとヤジが痛い……耳に突き刺さる……。だが、ここで止まるわけには行かない。すまん久水、親友のためだと思って耐えてくれ! 俺もイロイロ限界なんだから!
つか、なんでこんな部分まで忠実に再現してんだ所長さんッ! ここは別にテキトーでよかっただろッ!
盛り上がった右胸の上と、左胸と脇の少し下の辺り。ここに電極パッドを装着し、心電図の検査が始まる。
『心電図ノ検査ヲ開始シマス。シバラクオ待チクダサイ』
AEDに搭載された人工知能の指示に従い、俺は人形の傍で待機する。すぐに助けるための処置をしなくちゃならないって時に動いちゃダメと言われるのは、なかなかのもどかしさがあるな……。
この間に、四郷の方の進捗具合を拝見させてもらおうかな――って、もう電気ショックが完了していらっしゃる!? どんな解析ペースなんだよッ……! つーか、AEDまで腹の中に仕込んでんじゃねー!
――マ、マズい、処置の速さじゃ向こうの方が上っぽいな……! こうなったら正確さで勝負するしかない、のか……!?
『解析完了。電気ショックガ必要デス。ショックヲ与エタ後、胸骨圧迫ト人工呼吸ヲ行ッテクダサイ』
おっ――来たな!
「了解。お早めに頼んまっせ……!」
俺はAEDにある電気ショックのボタンを押し込み、再び様子を見る。向こう側は既に胸骨圧迫と人工呼吸のサイクルに突入済みのようだ。こりゃあ、キツイかも知れないな……。
――向こう側で繰り広げられている、親友同士(片方ダミー)の、命のやり取り。冷たい唇同士が、友の垣根を越えて重なり合い、許されざる愛が芽生え――
『
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