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フルメタル・アクションヒーローズ
第109話 試験と人形と揺れる胸
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に俺達の行動を不問にすると、今までの流れを「余興」と見做し、第二課目へ移行する旨を伝えて来る。伊葉さんも、特に言及することなく事の推移を静観するばかりだ。

 久水にしても所長さんにしても何を考えてるのかサッパリだが、彼女達の真意を探っているヒマはない。俺は俺で、やることがあるからだ。
 俺は第二課目の試験対象となる、久水の人形へと視線を落とす。

 眼前で眠る、久水を象った人形。やはり本物とそっくり――どころか、本物そのものと言っても差し支えない出来栄えだ。

「……全く、何が『ちょっと似ているだけ』だよ、丸っきりご本人じゃねーか」
「そんなわけがあるわけないでしょうッ! ワタクシが龍太様に捧げるその日ために磨き続けてきたこの身と美貌を、そんな下賎な人形風情と一緒にされては我慢なりませんわッ! ……もう限界ざますッ! 今すぐワタクシを抱いてこの確かな感触をお確かめ下さいましィッ!」
「なんでその距離から聞こえてんの!?」

 ボソッと呟いた独り言を、遠くの客席から確実に受信していた久水は、座っていた場所から身を乗り出して大暴れ。ある意味、最初に予想していた通りの絵面になってしまった。

「何を言い出すんやこの人ッ! ちょっ……座らんかいッ!」
「梢ッ! そんなふしだらな行いはこの兄が許さ――ボファアッ!」
「なんでそこまで頑なにしがみ付いてるのよッ……! どうしてッ……私の力で外れないのッ!?」

 周囲の皆が制止に掛かるが、身を乗り出して手すりを掴んでいる彼女を引き剥がすのは、俺より腕力のある救芽井でも至難の業であるようだ。あと茂さん……あんただけはそれを言っちゃいかんだろう。
 それから一分近くの時間を要して、遠くから冷めた目で見ている瀧上さんを除く、救芽井達全員でなんとか取り押さえたところで、俺は視線を「本物」から「人形」へと戻す。……もう絶対、迂闊なこと言えないな……。

『ルールは簡単。各々の固定装備などを用いて、心肺蘇生法による応急処置を行い、その迅速さと安全性を競うことになるわ。一分一秒の遅れが救助対象者の生死を分けることになる。人形相手だからって、気を抜かないように!』

 所長さんの口調が、だんだんと引き締まったものへと変化していくのがわかる。間もなく試験本番、というわけだ。

 ……さっきの第一課目で遅れを取った以上、ここで負けたらもう後がない。なんとか第三課目(サドンデス)に持ち込むためにも、今回は意地でも勝ちに行くぜッ!

 ――とまぁ、久水の発破もあって意気込もうというところだったのだが。

「……無理……。無理だよ、梢っ……」

 そんな消え入りそうな四郷の言葉が、何故か気になって……仕方がなかった。

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