暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第108話 第二科目の序曲
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
とっとびで現場まで行かせてもらおうかい!

『このコンペティションで重きを置くのは、外付けのオプションに依存しない基礎能力よ。いくら装備をゴテゴテ付けても、元がからっきしじゃいざって時に不安だもの』
「……なるほど。だからやけにシンプルな課題ばっかりなんだな」
『ええ。さっきは大きな距離を移動できるだけの能力を見ていたけど、今回は逆に繊細な動作が求められることになるわ』

 宙を舞ってから地面にたどり着くまでの間に通信で説明される、次の試験のミソ。確かに、前回とは正反対の要素を持っている。
 心肺蘇生法による応急救護措置。心臓マッサージや人工呼吸といった緊急救命の分野か……なるほど、確かにただ動けりゃいいって話じゃないな。
 なまじ超人的な力がある分、生身の人間よりも行動に繊細さが求められる。うっかりいつもの調子で心臓マッサージなんかしたら、心臓も骨もぺしゃんこになりかねない。

「この辺りが光点の場所のはず――おっ!」

 空中から見下ろしてみると、視界全体がアスファルトに覆われ、地面が近づいて来ているのがわかる。次第に、人影がど真ん中にぽつんと横たわっているのも見えてきた。
 ははん、あれが今回の試験で使うマネキンなんだな。見たところ、二人分が隣り合わせで倒れているようだけど……もしかして、四郷もここでやるのか?

「――あっ!」

 どうやら、その予想はどんぴしゃりのようだ。俺よりもひと足速く、アスファルトに降り立つ蒼い機械少女の姿が伺える。

 ……ようし。相手に呑まれないためにも、ここは一発、強気な台詞でも吐いてやるか!

「よう! さっきは見事にしてやられたが、今度はそう簡単に――」

 地面に降り立ち、二体のマネキン越しに彼女と相対した俺は、早速威勢のいい一言を――と、思ったのだが。

「……」

 彼女は俺の存在にすら気づいていないのか、酷く固まった表情のまま、俯くようにマネキンを凝視し続けていた。おいおい、俺はマネキン以下なのか!?
 ……にしても、何にそんなに硬直してるんだろうか。無表情ばかり見ている俺にもわかるくらい、彼女の表情は明らかに普段とは違っていた。

 そんなに衝撃的なデザインなのか? 俺は彼女に注目し過ぎていたせいで見落としていた、マネキンの出来栄えを確認し――

「おい、どうしたってんだ? たかがマネキンくらいで――」

 ――漏れなく彼女の仲間入りを果たす。いや……確かに、これは固まりますわ。

 俺と四郷の足元で眠る、二つの人形。これには間違いなく、凄く身近なモデルがいる。

 スラリと伸び、それでいて程よく肉の付いた扇情的な脚。流線を描く、滑らかなくびれ。それに追従するように、緩やかな曲線の形を成している、腰まで届くほどの茶色いストレートロン
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ