第108話 第二科目の序曲
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とっとびで現場まで行かせてもらおうかい!
『このコンペティションで重きを置くのは、外付けのオプションに依存しない基礎能力よ。いくら装備をゴテゴテ付けても、元がからっきしじゃいざって時に不安だもの』
「……なるほど。だからやけにシンプルな課題ばっかりなんだな」
『ええ。さっきは大きな距離を移動できるだけの能力を見ていたけど、今回は逆に繊細な動作が求められることになるわ』
宙を舞ってから地面にたどり着くまでの間に通信で説明される、次の試験のミソ。確かに、前回とは正反対の要素を持っている。
心肺蘇生法による応急救護措置。心臓マッサージや人工呼吸といった緊急救命の分野か……なるほど、確かにただ動けりゃいいって話じゃないな。
なまじ超人的な力がある分、生身の人間よりも行動に繊細さが求められる。うっかりいつもの調子で心臓マッサージなんかしたら、心臓も骨もぺしゃんこになりかねない。
「この辺りが光点の場所のはず――おっ!」
空中から見下ろしてみると、視界全体がアスファルトに覆われ、地面が近づいて来ているのがわかる。次第に、人影がど真ん中にぽつんと横たわっているのも見えてきた。
ははん、あれが今回の試験で使うマネキンなんだな。見たところ、二人分が隣り合わせで倒れているようだけど……もしかして、四郷もここでやるのか?
「――あっ!」
どうやら、その予想はどんぴしゃりのようだ。俺よりもひと足速く、アスファルトに降り立つ蒼い機械少女の姿が伺える。
……ようし。相手に呑まれないためにも、ここは一発、強気な台詞でも吐いてやるか!
「よう! さっきは見事にしてやられたが、今度はそう簡単に――」
地面に降り立ち、二体のマネキン越しに彼女と相対した俺は、早速威勢のいい一言を――と、思ったのだが。
「……」
彼女は俺の存在にすら気づいていないのか、酷く固まった表情のまま、俯くようにマネキンを凝視し続けていた。おいおい、俺はマネキン以下なのか!?
……にしても、何にそんなに硬直してるんだろうか。無表情ばかり見ている俺にもわかるくらい、彼女の表情は明らかに普段とは違っていた。
そんなに衝撃的なデザインなのか? 俺は彼女に注目し過ぎていたせいで見落としていた、マネキンの出来栄えを確認し――
「おい、どうしたってんだ? たかがマネキンくらいで――」
――漏れなく彼女の仲間入りを果たす。いや……確かに、これは固まりますわ。
俺と四郷の足元で眠る、二つの人形。これには間違いなく、凄く身近なモデルがいる。
スラリと伸び、それでいて程よく肉の付いた扇情的な脚。流線を描く、滑らかなくびれ。それに追従するように、緩やかな曲線の形を成している、腰まで届くほどの茶色いストレートロン
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