第108話 第二科目の序曲
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数秒後。彼女達のいる審判席の辺りから、「ガコン」と何か重いものが外れるような轟音が響き、思わず俺も皆も目を見張った。……なんだ? 設計ミスか?
――い、いや違う! 審判席の下から、何か巨大な板が出てきてる!?
「な、なんやアレッ!? なんか出てきよるでッ!」
「あの形……もしかしてスクリーン!?」
そこから実際に起きた変化に全員が驚く中で、一番に口を開いたのは矢村だった。次いで、救芽井もその実態を目の当たりにし、思わず声を漏らしている。
審判席の下部から出てきた、謎の板状の物体。言われてみれば、確かに形状からしてスクリーンのように見える。
あの近くまで行けば、さぞかし映画館のように見えるのだろう。ここ、本当になんでもアリなんだな……。今更か?
『これが、二人のそれぞれのアクションを撮った映像よ』
――だが、これに感心していられる場合じゃない。その巨大スクリーンに映し出された世界は、俺の傷心をえぐりかねないほどに克明に現実を語ろうとしている。
左右二つに分けられた画面の中で動いている、赤と青の二人の超人。青い方は巨大な腕を使い、まるでトビウオのように宙を舞っている。色使いも相俟って、シルエットによっては人魚のような優雅さすら感じてしまいそうだ。
一方、赤い方は――壁を蹴り、道路を走り、瓦礫を持ち上げ、とにかく忙しく駆け回っている。動きそのものは迅速なようだが、なんとも余裕のなさそうな雰囲気だこと……。まぁ、俺なんだけどね。
『さぁ、いよいよクリアする瞬間ね』
その所長さんの声が聞こえた瞬間、自虐から沈みかけていた俺の視線が、一気に元通りになる。この瞬間だけは、見逃せない。自分にきちんと納得させて、次の勝負まで引きずらないためにも。
顔を上げた俺の目の前に映っていたのは、救助対象者のオッサンの手を引き、跳び上がる俺と――同じ外見の対象者をマニピュレーターで包み込み、自分の脚でビルの壁を駆け上がる、四郷の姿だった。
何食わぬ顔で「ビルの壁を走って登る」という荒行をこなしているのも驚きだが、一番凄まじいのは、津波との距離が俺より縮んでいたのにもかかわらず、表情にも動きにも「焦り」がカケラも見当たらなかったことだ。
ギリギリまで津波が迫っていても焦燥感を見せず、それでいて救助対象者の保護も一切欠かしていない。その無駄のなさ過ぎる一連の動きは、まるで彼女自身が「水流」と化したかのような錯覚を起こさせるほどに滑らかで、競った相手の俺ですら、思わず見とれてしまいそうな「鮮やかさ」を感じさせられてしまう一瞬だった。
「津波を乗りこなす水の妖精」。柄にもない例え方で彼女の身のこなしを表現するならば、そんなところなのだろう。
一方、俺はオッサンの手だけを引っ張り、猛スピードでそ
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