暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第107話 押し寄せる波との戦い
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まバカ正直に真っ直ぐ走っていても、結局のところは捕まってしまうのも明白。だったら、たとえ無茶でもなんでもやるしかないんだよなッ!

 可能な限り逃げるスピードを殺さないよう、徐々に隙間に入るために進行方向を道路の端に詰めていく。
 そして、後ろで聞こえて来る、津波の轟音に内心で震えながら――僅かに力を溜めて強く大地を蹴り、一直線に隙間へ飛び込む!

 背後から迫る津波の影は、もはや思わず目をつぶりたくなるほどにまで濃さを増し、警戒音の激しさも、実践の中ですら聴いたことがないレベルに達している。
 きっと誰もが……俺自身ですら、僅かに諦めかける気持ちが湧き出てしまう、この状況。

 それを覆したのは――他でもない、この「救済の超機龍」のポテンシャルだったのだ。

「く――おぁあぁああッ!」

 このギリギリな事態を跳ね返したい。そんな思いゆえ、身体の最奥から気力を振り絞り、ただひたすらに叫ぶ。
 辛うじて俺がビルの隙間に飛び込めるまで、その奇声が止むことはなかった。
 やがてアスファルトを覆っていた津波が地面と衝突し、激しい轟音を立てると共に濁流へと変化した。

 ――失格にされてる様子はない! やった! 間に合ったんだッ!

 ……だが、安心してはいられない。
 ビルの隙間に逃げ込めたからって、津波がそのまま素通りしてくれるわけじゃない。津波の流れが僅かに分断されるだけで、こちらに向かって来ることには変わりないのだ。

 この窮地を脱するには、分断されて隙間に侵入してくる津波の勢いが、この狭い空間を飲み込む前に、高所へ避難するしかない。津波から逃げる最終目的地が「高い所」なのはどんな時代でも変わらないってばっちゃが――じゃない、救芽井が言ってた。
 そしてそれを成すには、「救済の超機龍」の運動能力に賭けて、このビルを屋上まで登りきるしかない。だが、立ち止まっていたらすぐに追い付かれてしまうだろう。

「――間に合ってくれッ!」

 俺は飛び込んだ時の勢いを利用して、ビルの壁に飛び掛かる。その後を追うように、とうとう津波がこの空間にまで侵入してきた!
 隙間の中という狭い場所に突然飛び込んできた津波の一部は、激しくうねりをあげて襲い掛かってくる。

 一方、俺は向かった先にある壁を蹴って反対側のビルに向かい、そこから同様の動作を繰り返した。
 壁を蹴って高さを稼ぐ、いわゆる「三角飛び」だ。本来なら、直接跳び上がった方が屋上を目指す上では速かったのだが、跳び上がるために力を入れてる内に飲み込まれては本末転倒だろう。

「くっ……うぉおぉおーッ!」

 けたたましい叫びと共に、俺はただ懸命に壁をひたすら蹴り続ける。数センチ下を流れる津波の勢いから逃れようと、俺はただ真上を見つめ、声を張り上げていた
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