『忘れ去られた人々編』
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渡りやって来た大型の草食動物達もが熟れた甘い果実の匂いに誘われてやって来る。
「フンッ。今日も間抜けな猪共が集まってきているな」
それを狙う狩人にとって此処は絶好の狩り場と言え場所だ。
設置していた罠に剛毛な毛で覆われ、鋭く尖った二本の牙を生やした胴体の大きな動物が数頭集まっているようだ。それを嬉々として木の物陰から見つめているのは全身緑の巨漢の男。
「こんにちは。ユッカルさん」
「俺の後ろに立つな!」
背後から声をかけたのがいけなかったのか、男は大きく飛び上がり明後日の方向へ身体を翻した。手には御伽噺に出て来る天使が持つような小さな弓と矢が一つずつ握りしめ、誰も居ない場所に向け矢を放つ。放たれた矢は何処へ飛んで行くのか、真っ直ぐではなくぐにゃりと方向を曲げ何故か放った主の元へと返って来て、本人の頭へぶすりと突き刺さった。
「んぎゃああああっ!!!」
「大丈夫ですか!?」
痛みにもがき暴れまわる全身木の葉だらけの男に手を差し出したが
「大丈夫な訳あるか! 痛いわ!!」
凄い剣幕で怒られてしまった。理由は分からないが怒られたという事にショックを受け、声をかけた青年、ルシアはしゅんと顔を俯せ「……ごめんなさい」とぼそり呟き男に謝罪した。それで気をよくした男は「分かればいいんだ、分かればな」と胸を膨らませえっへんと偉そうに咳き込んだ。
「と、ゆうより、誰かと思ったらルシアじゃねえーか!」
話しかけた人物に今気づいたのか、とツッコミを入れたくもなるが彼は決してボケているわけではなく、至って大真面目に答えていると言うのが輪をかけて悪い。
「こんにちは。ユッカルさん」
そしてその事に全くもって気が付かず、当たり前であるかのように捉え平然と答えるルシアもまた悪い。いつどんなときでもニコニコ笑顔なのは彼の長所であり、短所でもある。
「ユッカルさんじゃない、俺様の事はユッカル師匠と呼べといつも脇の下が酸っぱくなるくらいに言っているだろう!」
「そうでしたっ、すみません。ユッカル先生!」
「先生じゃない! 師匠だ、馬鹿者!」
鼻息を荒くさせ偉そうに言っているこの緑のカウボーイハットをかぶったこの男は、自称世界一の狩人であり、一応ルシアに狩りの仕方を教えた先生であり、剣術の師匠でもある。名前から解る通り、南の畑に居た怠け者の弟であり、西の草原の丘にいた働き者の兄ある、真ん中のお調子者だ。
「今日の獲物は……?」
ルシアは木の陰に身を潜め隣にいる師匠に訊ねた。
「あれだ」
師匠もルシアの隣へしゃがみ込み自分が仕掛けた罠に群がっている数頭の猪達を指さした。
むしゃむしゃと地面に置かれた果物や木の実を貪る猪達。その中心にいる体長
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