『忘れ去られた人々編』
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な物はそもそもこの村に存在しないと言った方がいいかもしれない。
人々から忘れ去られてしまった村には誰も近寄らない。旅人や商人など来るはずもない、村の人々も自分達が食べて暮らせれるくらいあれば十分だと考えているためあまり村の外へ出ようともしない。それ故にこの村は地図上からも消されてしまい、孤立してしまっているのだ。
「ただいま」
家のドアを開けば
「おかえりなさい、お兄ちゃん」
最愛の妹が笑顔で出迎えてくれる。
本当はベットから起き上がる事さえ辛いはずなのに、重い身体を引きづって玄関前まで来て、大好きな兄が帰って来るその瞬間を今か今かと待っていてくれるのだ。
そう考えただけでも、ぐっと目の奥が熱くなるものがある。
「今日はヤッカルさんのお手伝いをしたんだよね?
美味しい野菜いっぱいとれた?
虫さんたくさんいた?
おやさいとお兄ちゃんが取って来てくれたおにくがあればおいしいグラタンが作れるね……お兄ちゃん?」
今自分はどんな顔をしているのだろう。今にも泣きそうな顔をしているのだろうか、それとも嬉しさのあまりにやけているのだろうか、ヨナの不思議そうに首を傾げる顔を見るとふとそんな事を考えてしまった。
「今日はね、ヤッカルおじさんのところじゃなくて、ヨッカルおじさんのところでお手伝いしたんだ。
ほらみて、プウサギのお肉をこんなに沢山もらったよ」
右手に持っていたプウサギの肉が沢山入れられたビニール袋を持ち上げて見せる、するとヨナは一瞬複雑そうな顔を、
「わあ……これだけあればしばらくはお肉に困らないね」
したがすぐにいつものとろんとした優しい笑顔へと戻った。
何故ヨナがそんな表情をしたのかルシアは知っている。ヨナは命の大切さを良く理解しているという事を知っている―――自分達が生きるために、他者の命が犠牲になっていると言うとこを彼女はちゃんと知っている。自分の所為で兄が危険な目に合い大変な想いをしているという事をちゃんと知っている。
「じゃあ今日は腕に縒り掛けて作るね」
「いつもありがとう、ヨナ。僕も手伝はなくて大丈夫?」
台所へ入って行くヨナの背にそう声をかけると、
「大丈夫! お兄ちゃんは疲れているんだから、そこに座って待ってて」
と、怒られてしまった。男子厨房に入らずとはこの事か。正直に言うとヨナの料理の腕前はそれほどと、言うわけでもなく。どちらかと言うと……という味なわけではあるのだが、
妹に料理を作ってもらえるというのは、お兄ちゃん冥利に尽きるという事であって、それは最上級な幸福な事であって、たとえヨナの料理がそれほどのものであったとしても、妹の手料理というだけでそんなの全然関係ないわけで……
などと、色々自分に言い聞か
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