棟章――見捨てたのは神か人か
『絶望の未来編』
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無事送り届ける事、そして願わくばこの誰も救われない絶望の未来を変えたい、自分は救われなくていいからせめて"あの人とその仲間達"だけでも平和な未来を歩んでほしい。
(だからあたしは――)
自分にはまだ早過ぎる、似合わない、そんな大きな獲物をお前が扱いきれるのか、歴戦の戦士達から言われ続けた言葉。料理をする時でさえも包丁を握らない自分が誰かの命を奪う刃物を握る資格はないのかもしれない。だけどそれでも――背負っていた自自分よりもはるかに巨大な剣を柄を握りしめ振り上げると。
「こんなとろこで死んでる場合じゃないんだぁぁぁああ!!」
グルシャアア!!
のろのろとすぐ傍にまで迫って来ていた魔物をを真上から叩き斬った。響き渡るつんざくような悲鳴。地獄の底から鳴り響く断末魔はやはりこの世の生者が発するものではない。
縦真っ二つに斬り裂かれた魔物からは黒い、星の無い夜空よりも黒い液体が淋漓のように噴き出し辺り一面吹きつけ、ゆっくりとまるでスローモーションのように別れ二つとなった"肉"は地面にぼたりと倒れると、じゅうぅぅ……熱した鉄板で肉を焼いているかのような音を鳴らし黒い煙となって後絶命し、完全にこの世界から消え失せた。目の前からやっと一体の魔物が消えてくれた。
アアアア……あああ。
辺り一帯に無数にいる魔物の一帯が目の前から消えたくれた。魔法陣から無限に召喚される魔物のうち一体だけが目の前から消え失せた……ただそれだけのこと。
魔導士達が詠唱を続ける限り魔物は召喚され続ける。奴らを止めないかぎりこの闘いは終わらない、この闘いに勝利などありえない、そうだとしても。
(絶対に勝ってやる! 待っててね――お父さん)
強くそう心の中で想い、重たい大剣を振り回す。がむしゃらにだがしっかりと魔物を斬り裂いて走り出す先にいるのは魔導士。
「あんた達には怨みにしかないよ! コンチクショー!!」
目からは大粒の涙を。鼻からは滝のように落ちる鼻水を。穴と言う穴から水を流すみっともない顔で振り上げた大剣を真っ直ぐに振り下ろす。死んでいった仲間達の無念の思いを乗せて、殆ど握った事の無い大剣をを振り回す。怒りや悲しみ全てをぶつけるように。
「うおおおおーー!!」
最後に森に残るは――人か 魔物か 魔導士達か それとも別の存在か。それは神のみぞ知る事実であり、神の暇つぶしの遊戯である。
誰もが幸せな未来も。誰もが不幸な絶望の未来も、全ては神が振るう賽子しだい。この世界は謂わば神の用意した人生遊戯。
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