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儚き想い、されど永遠の想い
114部分:第十話 映画館の中でその四

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第十話 映画館の中でその四

「笑えるのですがその中に」
「悲しみを感じて」
「こうしたこともあるのですね」
「私も最初観て不思議な感じになりました」
「そう思われるのですね」
「はい、どうも」
 そうだと話す真理だった。
「こうしたものを観るのははじめてですし」
「喜劇をですか?」
「喜劇はあります」
 それはだ。観たことがあるというんどあ。
「ですがこうした種類の喜劇はです」
「チャップリンの様なものはですね」
「本当にはじめてです」
 真理はその映画を観ながら義正に話していく。そこでは滑稽な、それでいて何処か人間の悲しさを無表情な中で見せるチャップリンがいた。
 その彼を見ながらだ。彼女は話すのである。
「そうですか。これもまた」
「喜劇になります」
「これまで私は悲劇だけを観てきました」
「映画はでしょうか」
「映画だけではなくです」
 それだけではなくだとだ。全体の話をする彼女だった。
「それ以外のものについても」
「舞台もですね」
「シェークスピアがそうでしょうか」
「ロミオとジュリエットですね」
「ハムレットも。それも」
 どちらも悲劇である。シェークスピアの代表作の中でも有名な、だ。
「悲劇ですね」
「はい、確かに」
「そうしたものばかりを観てきて喜劇自体あまり観てはいませんでした」
「実際に御覧になられてどうでしょうか」
「先程も申し上げましたが」
「いいですか」
「はい、とても」
 微笑みながらだった。義正に話したのだ。やはり映画を観続けながら。
「滑稽な中に悲しみも入れている」
「それがチャップリンなのです」
「そうなのですね」
「はい、そしてです」
「そして?」
「純粋な喜劇はどうでしょうか」
 チャップリンから少し離れた話をだった。義正は真理にするのだった。
「そちらは」
「純粋な喜劇ですか」
「先程シェークスピアをお話に出されましたね」
「そうしましたが」
「そのシェークスピアです」
 彼はそのシェークスピアの中からだ。話すのである。
「彼にも喜劇があります」
「はい、ヴェニスの商人や真夏の夜の夢ですね」
「御気に召すままもあります」
 悲劇だけではないのがシェークスピアだ。彼は喜劇も多く残しているのだ。もっとも書いている人間は実は違うのではないかという説もある。
「そうした作品ではです」
「愛は成就するのですか?」
「はい、しています」
 それがシェークスピアの喜劇の特徴の一つだ。必ずハッピーエンド、しかも見事な大団円になるのが彼の喜劇の結末なのだ。

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