第六十話 ヤン・ウェンリーのエコニア滞在記
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と大尉で決算していたから訳の判らん状態なのだよ。
その上、私は此処に就任して1年5ヶ月目なんだが、
いきなりの昇格で、上との折衝等も行わねばならなくなり忙しすぎて処置出来んのだよ、
其処でヤン少佐とパトリチェフ大尉に書類処置をして貰いたいということだ。
コステア大佐が使っていた所長室は、
そのままにしてあるから其処で作業を行ってくれ」
「はあ判りました」
「まあ今日は疲れただろう、明日から取りかかってくれ」
「了解しました」
自室に案内され従卒に紅茶を頼み暫く寛いでいると、
夕食だとパトリチェフ大尉が呼びに来た。
しかし士官食堂では良い席だが、ヤンにとっては鬱陶しい席だった。
収容所所長のジェニングス中佐に近い席のことである。
元々ヤンは美食家じゃないので士官食堂で問題ないが、
収容所所長と3メートルしか離れてないテーブルでは、
本のページを捲りながら紅茶をゆっくりすするという気分になれないのである。
居心地の悪い食事を終え、部屋に帰る途中、廊下の隅で若い男女が囁くように会話する声を聴いた。
男性兵士と女性兵士が、深刻な表情で何か相談していたのだが、
ヤンの姿を見でさらに隅へ移動してしまい、彼らの姿はヤンの視線から直ぐに消えてしまった。
他人の恋愛をざたを妨げるつもりも無かったので、
ヤンはそのまま自室へ歩き去ったのだが、
押し殺したような男の声が耳を掠めた。
「ふん、話したって無駄さ。士官学校出身のエリートさん、
しかもペテン師に、下積みの兵士の苦労や心情がわかるかよ!」
ヤンにしてみれば士官は別として一般兵の心情を見た気がしたのである。
翌日からヤンはパトリチェフと共に膨大な書類の山がある元所長室で仕方なしに整理を始めた。
さらに時折新任の会計係のバリング中尉が書類を持ってきて指示を受けに来る。
ヤンにしてみればノンビリと出来ると思った星が、
やたら勤勉さを求める土地だったという罠であると思えて成らないのであった。
2ヶ月が過ぎ、いい加減書類の山から解放されたい、
火でも付けて燃やしたいと思い始めたある日。
バリング中尉が会計記録簿におかしな記載を発見したと伝えてきた。
「少佐殿」
「どうしたんだい中尉」
「会計記録簿をチェックしていたのですが、
購入した備品や食材の数や質が合わないデーターが多数出てきたですが」
ヤンにしてみれば厄介ごとがまた来た感じである。
「どれどれどんな感じだい?」
「はっ、7年ほど前から納入される品物の質がそれ以前より悪くなってきているのです」
「しかし其れは、予算措置の結果じゃないのかい?」
「いいえ、調べた結果ですが、予算は此処数年間は捕虜1人当たりに対しては殆ど変わっておりません」
「そうし
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