巻ノ百十九 大坂騒乱その十一
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「お主達もな」
「戦で、ですな」
「死にますな」
「そうなりますな」
「おそらくは」
「殆どの者が」
「そうなるであろう、しかし我等が死んでもな」
それでもというのだ。
「右大臣様、そしてご子息の国松様はな」
「どうしてもですな」
「お助けする」
「お命だけは」
「そうするのじゃ」
二人の命だけはというのだ。
「よいな」
「ですな、我等が死のうとも」
「そうなろうともです」
「ここは何とかです」
「お二人だけは生きて頂き」
「天寿を全うして頂きましょう」
「万が一の手筈は整っておる」
それは既にとだ、大野は話した。
「肥後の加藤殿にもな」
「既にですか」
「文を送られていますか」
「では万が一の時は」
「お二方はそこに移って頂きますか」
「島津殿にも送った」
その文をというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「いざという時は」
「密に船を用意しておいて」
「加藤殿、島津殿にお任せする」
「右大臣様と国松様を」
「ここだけでの話じゃが真田殿もその手筈をされておるという」
幸村もというのだ。
「流石であるな」
「ですな、まことに」
「武田家の頃からの智勇兼備の家でしたが」
「既にですか」
「そのことも手を打っておられましたか」
「あの方は」
「そうじゃ、あの方はまことにな」
幸村、彼はというのだ。
「天下の知将、是非大坂に来てもらうぞ」
「わかり申した」
「では文を送りましょうぞ」
「そして戦の用意ですな」
「それに入りますか」
「そうしようぞ」
こう言ってだった、そのうえで。
豊臣家は幕府即ち徳川家との手切れは避けられぬと見てそのうえで各藩の大名達に文を送り。
天下の浪人達の中で主立った者達にも文を送った、天下を二つに分けた戦がここでまたはじまろうとしていた。
巻ノ百十九 完
2017・8・16
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