アネモネ〜園田海未〜
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私は泣いているのだろうか......
お母様が亡くなってからずっと我慢してきた涙。
もう縛られなくて済む、という安堵とどうしてこうなってしまったんだろう、という後悔が涙とともに流れ落ちていく。
ただ、嬉しかった......
「うれ、しい......」
───お母様が微笑んでいる。
───そんな、気がした。
〜☆〜
......いつもの道といつもの景色。
都会の片隅にある住宅街を、何の目的も無く僕は歩いていた。
寒くもなく、かといって暑くもない丁度いい心地よさに胸躍らせながら、ただひたすらに足を前に動かす。
そんな時、僕は歩道に隅に落ちている真っ白なハンカチが目に留まり、足を止めて拾う。
特になんの変哲も無い、シンプルなデザインのハンカチだ。ハンカチの裏面に小さく筆記体で『SONODA』と綴られていた。
誰かの落とし物だろう、と僕はそのハンカチをしまい込んだ。
どうせこの先に交番がある、そこで警官に渡せばいい。
そのまま、俺は何事も無かったかのように歩き出す。今日もいい天気で雲ひとつ見当たらない快晴だ。
こういう日に限って、よく良いことが起こる。
一昨日はスーパーのお肉が超特売になった。先週は迷子の猫を捕まえて飼い主の元に届けたら夕飯をご馳走になった。その前の週はお茶の茶柱が立った。
......そして今日は。
「あ、あの!」
不意に後ろから声をかけられたような気がして、恐れながらも足を止める。
そこにいるのは口から『美しい』という三文字が飛び出てしまう可憐な女性。
小顔でシトリンのような眩い瞳、明るいブルーの長髪が、乱れていることからここに来るまでに相当走って来たと予想する。
そして純白のポンチョを着こなしていて、非常に清楚な第一印象を受けた。
息を切らしたその女性は、深呼吸を二度三度してから僕に尋ねる。
「あ、あの!この辺りにハンカチ落ちてませんでしたか?筆記体で『SONODA』と書いてあるものなんですけど......」
それは間違いなく、今ついさっき僕のポケットの中にしまったハンカチの事だろう。
「私の高校時代の友人から頂いた、大切な宝物なんです......」
目じりを下げながら話す彼女に、見惚れてしまう。
『綺麗だ』と、心の底から思った。
僕は小中高と男子校に通い、女性との縁がまった
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