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あの人の幸せは、苦い
4. 役不足
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だろうけど、あたしが全部、あんたの気持ちを聞いてあげるから」
「……」

 きつく抱きしめてなお、私の頭を撫でてくれる隼鷹。その優しさが私の口を、再び私の意識から切り離した。抱きしめられて手が自由に動かせないから、目に溜まる涙が拭えない。溜まりに溜まった私の涙が、上を向いた私の目尻を辿っていく感触が伝わった。

「……」
「……」
「……」
「……す……き」

 もう我慢しなくていい。その安心感が、私の口を遮ることをやめた。私の口は、私の本心を少しずつ言葉にした。最初はたどたどしく呟くように。

「……すき」
「……」
「ハルが好き……好き。ハルが好き」

 しばらくして、はっきりと。

「好き……好き。私は、ハルが……好き」
「……」
「ハルが好き……好きなのに……ずっと好きだったのに……ひぐっ……」
「……」

 やがて、涙混じりの鼻声で。胸が引きつって息がとてもしづらいけれど、私はひたすら、『ハルが好き』と繰り返した。

「好き。ひぐっ……私はハルが好き……」
「うん」
「好きなのに……ハル……いやだ……ひぐっ……私、ハルが好き……いやだよ……」
「うん。いやだね」
「好きなの……ハル……あなたが好きなの……ずっと好きだったの……ひぐっ……好きだったんだよ?」
「そうだね。ずっと……ずっと好きだったんだもんね」
「夜にお店の窓を開けたら、笑顔で怒ってくれるハルが……ずっと好きだったんだよ? ひぐっ……ハルの冗談、本気にしたんだよ? ずっと……ずーっと好きだったんだよ?」
「……」

 一言本音をこぼしてしまえば、もう私の口は止まらない。時々しゃくりあげつつ、私は本音をポロポロとこぼす。壊れたジュークボックスのように、私は何度も何度も『ハルが好き』と繰り返し続け、私の胸の中で輝く、笑顔のハルに気持ちを伝えた。

 ねえハル?

 なんで私じゃなかったんだろう?

 私が毎晩遊びに行って、夜戦夜戦って賑やかだったから? 肝試しの時、一人で夜戦夜戦ってはしゃいでたから?

 私が球磨みたいに、ハルをぞんざいに扱ってたら……ハルのボケに過剰に突っ込んでたら、ハルの隣にいられた? ハルのお店で、ハルを散々振り回してたら、ハルの隣にいられた?

 教えて? 球磨みたいにショートパンツ履いて、男の子っぽく振るまっていれば、ハルは私を選んでくれた? おんぶをせがんだり膝枕をせがんだり、わがままで振り回していたら、ハルは私を選んでくれた?

 それとも……

「ハルがきた時、最初に出迎えたのが球磨じゃなくて、私だったら……ハルは……ひぐっ……私を選んで……くれた?」
「……」
「ハル……好き……大好き……行かないで……」
「……」
「ハルの隣にいたいよ……ひぐっ……ず
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