第106話 始まりの舞台、それは幻想の廃墟
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が「それっぽい」動きだ、まるでドシロウトみたいじゃないかッ! ――にしても、一体なんでこんな所にガラスなんて降ってきたんだ? 地面の裂け具合も酷くないし、ここはそこまで損害はないはず――
ガラスの存在を意識していくうちに、脳裏に浮上してきた疑惑。その実態を確かめるべく、俺は頭上を見上げ――思わず言葉を失った。
そこには、マニピュレーターを翼のように広げ、ビルからビルへと跳び回る、四郷の姿があったのだ。
……しかも、俺とは段違いの速さで。
「……現時点、半径五十メートル以内における『生存者』のデータは、なし。現移動方法を継続……」
相変わらずな無表情のまま、呪文のように何かを呟くその姿は、さながら人工知能に「憑りつかれている」ようにも見えてくる。頻繁にあちこちを見渡してる辺り、「生存者」がいた場合に、さっきみたいなガラス破片を落とさないようにと気を付けてるみたいだが……ライバルにも気を遣ってほしいもんだ。着鎧甲冑を着てるとは言え、一応本物の人間なんだから。
……にしても、彼女のマニピュレーターを使った動きには驚かされるな。
建物と建物の隙間に飛び込み、マニピュレーターでその両端を掴んで、その勢いを利用して飛び出している。まるで、パチンコの弾丸だ。
確かに、あの方法ならただ単純に脚力だけで動いている俺なんかより、よっぽど速く動ける。最高速度に乗ったトラックを、腕力だけで止められるマニピュレーターの力で、あの小さな身体を打ち出しているんだからなおさらだ。
――こりゃあ、手強いどころの騒ぎじゃない……! 急がないと、あっという間に差を付けられちまうッ!
そして、慌てて踵を返し、目的地の青い光点を目指そうとした瞬間。
今度は視界が突然真紅に染まり、警告音が鳴り出した!
「こ、今度はなんッ――」
『さて、両者共に救助対象者までの距離が半分を切ったところで、いよいよ本テストの最大の障害よ! コレだけはさすがに物理的には再現できなかったけど、飲み込まれたら即ゲームオーバーって意味じゃあ、危険度は変わらないわ。二人とも、くれぐれも気をつけるようにっ!』
――メ、メインディッシュ? 飲み込まれたら即ゲームオーバー? 一体何だってんだ……?
意味がわからない。
焦る気持ちもあってか、その一言しか心の言葉にできずにいた、その時。
警告音がさらに激しさを増し、背後に何かの影を感じた。次いで――とっさに振り向く。
「……マジ……かッ!?」
その「実態」を目の当たりにして、ようやく俺は所長さんの言っていたことの意味に、たどり着くことができた。――いや、「今頃になってたどり着いた」と表現する方が正しいのかも知れない。
俺自身はおろか、アスファ
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