第105話 蒼き身体と虚構の戦場
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択肢はない。
……だから、俺は片時も四郷から「目を離しちゃ」いけないんだ。彼女の心を理解することは出来なくても、せめて万一の時は物理的な意味だけでも守れるよう、「思いやれる」ように。
――それが、「正義」がどっちなのかも、そもそも何なのかもわからないバカな高校生にとっての、なけなしの「正義」だから。
『……双方、準備はオーケーみたいね。本コンペティションは「救助対象者への迅速な移動」「心肺蘇生法による応急救護措置」「最低限の自己防衛能力」の三課目で検査されるわ。審判は、私の隣にいる伊葉和雅氏が担当するわよ』
『実践の中で本当に人命を救えるかどうか、という効率性に準じて判断させて貰う。両者の健闘を、祈る』
そして、俺達の用意が整った瞬間を見届けて、所長さんがコンペティションの概要を口にする。それに次いで、今まで黙したままで俺達を見つめていた伊葉さんも、ようやくその重い口を開くのだった。
こんな何もないアリーナで、どうやってそんなテストをするのか知らんが……まぁいい、どんなルールだろうと全力で――
『では、まず第一課目「救助対象者への迅速な移動」からよ! 伊葉氏の言う通り、双方の健闘を期待するわ!』
――ッ!?
『鮎子の変身機能から来る発光現象を応用したこのホログラムは、最新の災害情報に準じて作られているわ。作り物だからってナメてるとあっという間にゲームオーバーだから、油断しないように!』
……こんなことが、有り得るのだろうか。所長さんの言葉を自分なりに解釈するなら、俺はある意味で「夢」を見ているのだろう。
他の人達には、この世界はどのように見えているんだろうか。四郷にはどう見え――いや、彼女の姿が見えなくなった今では、わかりっこないな。
無機質で真っ白なアリーナが、一転して――廃墟のような寂れた市街地になってしまったのだから。
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