暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第105話 蒼き身体と虚構の戦場
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ま。実年齢は二十五歳に及んでいるというのに、その姿や振る舞いには、年相応の雰囲気がまるで見られない。
 それはきっと、大人になっていくために外界に触れていく手段と気持ちを絶たれたことに起因しているのだろう。身体も心も機械に閉ざして、意識だけをそのままに十年間も幽閉された彼女の壮絶過ぎる人生。その痛ましさは、家族にも周囲の人にも恵まれすぎていた俺には、察するにあまりある。

 そんな俺が、彼女を理解し、「心から」救うことなど一生掛かっても不可能なのかも知れない。ここに来るまで、俺達が立つこのアリーナの、無機質さ故の不気味さに気づかなかったように、彼女の苦しみも、彼女と同じ目に遭わなければ理解できないはずなのだから。

 ――だが、それは俺自身が投げ出していい理屈にはならない。

「着鎧、甲冑……!」

 右腕に嵌められた「腕輪型着鎧装置」のマイク部分に、唸るような声色で音声入力を行う。それに反応した腕輪から、蕾の中から花が広がっていくかのように赤い帯が飛び出し――俺の全身を巻き付けるように包んでいく。
 それは俺の視界にも及んでいたが……やがて深紅に染められていた世界は、バイザー越しに「新人類の身体」と化した四郷を見つめる光景へと変化していった。
 そして、紅のスーツ――「救済の超機龍」への着鎧に成功した事実を、真っ赤な自分の掌を見遣ることで確信し、俺は四郷の方に向き直る。

 ――俺は、茂さんに言った。「相手が誰だろうと助ける」って。だって、今の俺はそれだけを胸に生きてきた救芽井の代わりに、ここに立っているんだから。
 俺には、四郷の気持ちを理解することなんて、多分できない。いや、できなくたって構わないんだ、きっと。人の気持ちなんて、エスパーでもなきゃわかりっこないんだし。
 ……だから、こんな時に大事になるのは多分――「目を離さない」ことなんだ。

 彼女が苦しんで来たのは「今まで」じゃない。「今も」、なんだ。俺がこうしてあれこれと考えてる間も、彼女は機械の中に身も心も囚われ続けている。
 このコンペティションに勝つことが、必ずしも彼女のためになるとは限らない。何か状況を変えるきっかけに成りうると言っても、瀧上さんが暴れ出してそれどころじゃなくなる可能性だってある。
 そもそも、彼女を「新人類の身体」や瀧上さん絡みの因縁から解放すること自体が、彼女にとっての幸せなのかもわからないんだ。もしかしたら「押し付け」に思われて、余計な手出しをしないで欲しい、だなんて反発されるかも知れない。……久水の存在を考えると、そうでもない可能性もあるにはあるのだが。

 ――それでも、俺は所長さんにも救芽井にも茂さんにも、「勝つ」と約束して、ここにいる。なら、このコンペティションに勝つことが彼女のためになると期待して戦う以外に、俺に選
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ