暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第104話 ヒーローを救うヒーロー
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。今は本番が大事。
 頭では、嫌というほど理解しているつもりでいた。

 だが、所長さんから全てを聞いて、伊葉さんが言おうとしていたことに気づいた時、彼の話とこの戦いが簡単には切り離せないものだということを知り、俺の中で確実に何かが変わったのだ。
 七千人以上の人間を虐殺し、国さえ滅ぼし、四郷姉妹を絶望に追いやった「瀧上凱樹」という男。彼を前にして、どこまで自分の――着鎧甲冑の理念を守れるか。伊葉さんは、それを問おうとしていたんじゃないだろうか。
 このコンペティションに勝てば、説得次第で瀧上さんを抑えられるかも知れない。所長さんはそう言っていたが、その可能性が一割にも満たないということくらい、彼の威圧の片鱗しか目の当たりにしていない俺でもわかる。
 もし、瀧上さんが往年の狂気を取り戻し、この研究所の中で猛威を奮ってしまえば……。

「俺は……」

 そう思えば、どれだけ先伸ばしにしようとしても、あの伊葉さんの話が脳裏を過ぎってしまうのだ。
 それは「答え」を出していない俺にとっては不安の元となり、気の迷いに繋がる……。そんな節が、きっと表情に現れていたのだろう。

「――今になって言うことではなかったかも知れん。その非は認めよう。だが、あの娘が『救済の超機龍』と救芽井エレクトロニクスの命運を貴様に託している以上、貴様にも相応の覚悟を決めて貰わねば、ワガハイも安心して見届けることができんのだ」

 茂さんの言うことはわかる。俺だって、こうなった以上は全力でやるつもりだ。ここに来るまで、何度も悩んだり腹括ったりの繰り返しだったし、今だって怖い思いを捨てきれてるわけじゃない。
 それでも、この場に広げられた廊下を渡り出したら、もう止まる気はない。控室で、そのための気合いは注入してきた。

 ――問題は、瀧上さんの動向なんだ。
 彼がこのコンペティションの結末に、どう動くか。場合によっては、伊葉さんの問いに迅速に答えなくてはならなくなるだろう。
 茂さんはこの研究所の真相は知らないはずだが、妹の久水があそこまで察している様子だったのだから、薄々感づいていても不思議ではない。食卓で瀧上さんと肌を合わせた後なら、なおさらだ。

 だからこそ、彼はこのタイミングで俺に問い掛けたのかも知れない。この先すぐに救うか捨てるかの選別を迫られた時、「間に合わなくなる前に」答えを出せるのかどうか。その準備があるかを、確かめるために。

「……もし万が一、我々の知らない何かを貴様が秘密裏に知っていて、そのせいで答えが出せない、というのであれば――それも構わん。だが、その場合は話さないと貴様が決めた以上、貴様自身の解釈でカタを付けておけ。そこから生まれる『迷い』のために、あの娘が悲しむことがないように、な」

 俺からは、特に何も口に
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