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フルメタル・アクションヒーローズ
第103話 淫らで凛々しき女騎士
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「集まったわね。それじゃ、行きましょうか!」

 ロビーの中に立ち込める、張り詰めた空気。それをどうにか和ませようとしているのか、所長さんの声色だけがやけに明るく感じられる。
 それでも、昨日のようなハイテンション状態には至らない。恐らく、今日は「使って」いないのだろう。

 ……しかし、指定された時間に集合した時、既に俺以外の全員が集まっていたのだが――「コンペティション当日」というだけあって、ロビー全体の空気が段違いに重く、私語の類が全く聞こえてこなかったのには、驚かされたもんだ。

 「空気を和らげて、心置きなく全力で戦えるように」と、私服での参加を許した所長さんの措置が、完全に無駄になっている。
 もしここへ目隠しでもしながら来ていたら、自分が一番乗りなんだと勘違いしていたことだろう。

 実際にコンペティションに参加するわけでもないのに――救芽井も矢村も、やけに強張った表情で俺を出迎えていた。何とか笑顔を作ろうとして失敗し、思い切り不気味になってしまっている……というところだろうか。
 そこまで二人に緊張されてしまうと、かえって代表として出場する自分自身が冷静になってしまう。案ずるより産むが易し、とは正にこれだ。
 ゆえに、俺は「大丈夫だから」「心配ないって」と女性陣二名を励ましながら、所長さんの指示を待ち続ける状態になっていた。……最初は、俺が励まして貰いたかったくらいなんだけどな。

 救芽井のことは、昨日のアレで多少はほぐれたかと思ってたんだが……やっぱり本番直前となると、緊張感が違うらしい。信じたいけど、やっぱり心配。そんな本音が、表情からダダ漏れなのだ。
 矢村も夕べはリラックスしていたようにも見えたが、いざ本番前になると弱い様子。場違いな感想だが、初めて会った時のテンパり具合を思い出して、微笑ましいとすら思えてしまう。

 そして先程、所長さんの指示によって全員がエレベーターへ移動し始めたのだが――瀧上さんや伊葉さん、茂さんには、救芽井達にあったような「焦り」の色は全く見られないままだった。
 緊張感こそあるにはあるが、その面持ちに揺らぎはない。さながら、死地へ赴く武士のような印象を、眼差しだけで周囲に与えている。
 久水に至っては、救芽井らとは正反対で、「心配することなんて何もない」と言わんばかりの佇まい。四郷は……どこと無く、何かについて「諦観」しているような雰囲気を漂わせている。

 ……大丈夫だ、きっと。
 今日で何かが変わる。俺が変える。そう決めたんだから――もうちょっとの辛抱だぜ、四郷。

 エレベーターの中に入って移動している時でも、沈黙が破れる気配はない。救芽井と矢村も、俺の声で多少は顔の筋肉が緩んだようだが、まだまだ落ち着いているとは言い難い感じだ。
 救芽井エレクトロ
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