第103話 淫らで凛々しき女騎士
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ているのだろうか。
ふと一昨日、この気丈なお嬢様が、瀧上さんの威圧に圧倒されていた時のことを思い出す。この土壇場でここまで整然としている彼女でさえ動揺させるほど……か。直に戦うと決まったわけでもないのに、妙に意識してしまうな。
だが、その前に四郷だ。久水の言う通り、今回のコンペティションは、きっと俺の想像なんてメじゃないくらいの厳しさになるのだろう。瀧上さんの件を一切抜きにしたって、油断なんかできやしない。
「……うん! そうだよね! 戦うのは龍太君なんだから、私達が緊張してる場合じゃない! 龍太君、いまさらだけど、各種機能と併せてスーツ内の人工筋肉もチェックしておくわ! 腕輪を貸して!」
「そうやな……! アタシ、龍太のことやからお腹空くやろうなって思ったけん、自分の分のシャケおにぎり持ってきたんやわ! 今のうちに食っとき、男はメシ喰ってパワー付けないけんよっ!」
「お、おうっ! 二人ともサンキューな!」
久水の振る舞いにたきつけられたのか、二人ともすっかり元の調子に戻っている。俺は「救済の超機龍」の「腕輪型着鎧装置」を救芽井に渡すと同時に、矢村の両手にちょこんと乗せられたおにぎりを掴む。
救芽井はどこからかノートパソコンを取り出し、腕輪をケーブルで繋げてキーボードを叩きはじめる。矢村は本番までに身体をほぐそう、と言い出し、俺の背中にもたれ掛かってストレッチをするよう迫ってきた。
「人工筋肉の電動効果、異常なし。バッテリー満タン。救急パック不備なし。酸素タンクは……」
「すっかり硬くなっとるなぁ〜……。今のうちに、しっかり伸ばしとかないかんで! 走っとる時に攣ったりしたら大変や!」
――なんだか、いつも通り……というか、二週間前にタイムスリップしてしまったのかと錯覚してしまうな。
こうして三人一緒にいて、二人とも俺のために、あれこれと手を尽くしてて……。おかげで、俺の気分もだんだん元通りになって来たみたいだ。
一方、久水はそんな俺達を見つめ、胸を撫で下ろすようにフウッとため息をつくと、壁にもたれ掛かったままの茂さんの方へ歩いていった。
――心配、してたんだろうな。俺だけじゃなく、救芽井や矢村のことも。
それから、本番開始の予定時刻までの数十分。俺達は心身共に、「いつも通り」のコンディションまで回復させることに成功した。
もう、ここに来た時の重苦しさは微塵も見られない。それは、久水の面持ちに近しくなった救芽井達の様子を見れば、一目瞭然である。女同士の友情パワー、恐るべし。
「龍太、もう開始時刻の十五分前や。そろそろやで!」
「龍太君、用意はいい!?」
「龍太様、祝勝を兼ねての夜伽の準備は万全でしてよ……?」
「おうッ――って久水ッ!? お前はなんか『いつも通り』過ぎるん
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