108部分:第九話 知られたものその十四
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第九話 知られたものその十四
「帰ろうか」
「あの、旦那様」
気遣う顔でだ。佐藤は彼に言った。
「このことは」
「このことは?」
「言いませんので」
そうしたことはだ。何があってもだというのだ。
「ですからそれは」
「済まないね」
「言うべきこととそうでないことがあります」
佐藤の言葉は冷静だった。
「ですから」
「いや、だからこそね」
「だからこそですか」6
「うん、有り難いね」
そうだと話す義正だった。
「君でよかったよ。見たのが」
「そう仰いますか」
「正直他言してもらうと困るからね」
「それはいいのですが」
「いいとは?」
「隠していなければならないもの」
佐藤がここで話すのはだ。このことだった。
「それを永遠に隠すことはです」
「よくないんだね」
「秘密の恋もいいでしょう」
佐藤はそれもいいとした。だが、だ。
彼は同時にだ。こんなことも主に話した。
「ですがその最後にあるものは」
「幸せがあるかどうか。それは」
「幸せになりたいですね」
こう主に対して問いもするのだった。
「そうなりたいと思いますが」
「うん、なりたいよ」
その通りだとだ。義正も話す。二人は今は喫茶店に入っていた。そしてそこでだ。二人だけの話をだ。紅茶を飲みながら話していくのだった。
「是非共ね」
「それはわかります。ですが」
「秘密にしたままだと」
「そうはなれないのです」
幸せにはだ。そうだというのである。
「決してです」
「秘密は秘密のままだから」
「旦那様はあの方とどうなりたいのでしょうか」
「結婚したいよ」
義正は真剣な顔で答えた。
「今はじめて言うけれどね」
「結婚ですね」
「うん、そうして二人一緒にずっと」
「だとするとです。このままではいけません」
「それじゃあ僕は」
「はい。公にすべきなのですが」
佐藤の言葉は曇る。そしてだ。
彼はだ。また話すのだった。
「ですがあの方は」
「そのこともわかったんだね」
「私もまた代々八条家に仕えています」
だからこそだ。それでわかるというのである。
「八条家の。敵といえば」
「白杜家だね」
「あの家のお嬢様との愛は。やはり」
「許されない」
「そう思います」
まさにだ。それでだというのである。
それを話してだった。佐藤は暗い顔をするのだった。
そうした話をしていってだ。二人はだ。
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