暁 〜小説投稿サイト〜
あの人の幸せは、苦い
3. 気持ちは、伝えられない
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 ひとしきりクラッカーを鳴らしたその後は、いつものみんなの、いつもどおりのどんちゃん騒ぎとなった。

「んー……やば……」
「ん? 加古?」
「クラッカーの音……心地よく……て……ねむ……クカー」

 私の席の隣に陣取っていた加古は、クラッカーがひとしきりパンパンと鳴り響いたところで、いつものように眠気に襲われ、窓際の席に移動して眠りこけた。あのパンパンうるさいクラッカーの音で眠くなるってどういうこと……? 私の知る限り、その日加古がもう一度目覚めることはなかった。

 そんな加古はほっといて……みんなの先陣を切ったのは、ビス子と暁の一人前のれでぃーコンビ。ハルと球磨に歌をプレゼントするつもりだそうな。いつの間にか持ってきていたスピーカー付きのプレイヤーから、軽快なピアノの伴奏が流れてきた。

「私と暁がこれから二人にプレゼントする歌は、私の祖国ドイツの民謡なのよっ!!」
「へぇえ〜!! それはすごい!!」
「ビス子と一緒に一生懸命練習したんだから!!」
「そらドイツの歌なんて難しかっただろー」
「では心して聞くがいいわハル! そして球磨!!」
「いくわよビス子!」
「よくってよ暁っ!」
「「タイトル、『小鳥の結婚式』っ!!」」
「ビス子はまだしも、暁がドイツ語の歌を歌うのか……ドキドキ」
「ワクワクするクマ……!!」
「「わっかっばっのっ もりかっげっに あつまっるっよっ ことりったーちー」」
「「「「「!?」」」」」

 最初は『ドイツ語で歌うのか!? ビス子はいざしらず、暁がドイツ語を!?』と皆が驚嘆したが、蓋を開けてみればどってことない。日本語の歌詞だった。

 でも、小鳥が結婚式をあげるという歌詞や軽快な旋律、そしてなにより、どこかたどたどしく、そして一生懸命な二人の歌い方は、とてもかわいらしくて、今日の結婚式にぴったりだ。

 あとでビス子にこっそり聞いたのだが、暁は本当はドイツ語で歌いたかったのだとか。……でもまぁ、暁はもちろん、ビス子もドイツ語よりは日本語のほうが慣れ親しんでるだろうしね。日本語で正解だと思うよ。ビス子も日本語の方が歌いやすいはずだし。

「だから私はどいっちゅだって何回言わせるのよっ!?」


 暁とビス子の可愛らしい歌の後、提督の手によってハルと球磨の前に持ってこられたのは、横幅30センチ程度の四角のウェディングケーキ。ケーキの真ん中には、マジパンペーストで作られた、ハルと球磨のフィギュアが乗っている。

「うわー! きれーい! すごーい!!」
「あんた、こんなのいつの間に作ってたの?」
「くっくっくっ……マイスイートハニーのお前に悟られないように、深夜に作ってたんだよ」

 『いや別にバレてもいいじゃん』『しかしッ!?』と夫婦げんかをはじめた提督
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