3. 気持ちは、伝えられない
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―ダメだよ川内ちゃん!
……ごめん那珂。体が言うこと聞かない。口が勝手に言葉を並べようとする。これを私が言ってしまえば、ハルを困らせてしまう……それがわかっているから、私は必死に口を閉じようとするけれど、私の口が言うことを聞かない。
「あのさ……」
「おう」
「あの……私……ハル……が、す「ハルごめーん!!」
寸前のとこで、私の両肩にずしりとした重みが加わったことを感じた。私の口がハッとして、言葉を紡ぐのをやめる。手もそれに合わせて、ハルの袖から手をパッと離した。
「おー隼鷹もおかえり」
慌てて振り返り、私の両肩にのしかかったものの正体を確認した。私に寄りかかっていたのは、さっきトイレですれ違った隼鷹だ。
「じ、隼鷹……」
「ごめんって、何だよ」
「あのさ。言ってなかったけど、あたしと川内、これからちょっと用事があって出なきゃいけないんだ」
「えらく急だなぁ。お前が浴びるように飲んでもいいように、二次会用に樽酒を準備しといてやったのに?」
「うん」
ハルは少々困惑していた。きっと隼鷹からは何も聞いてなかったに違いない。きっとそうだ。私自身、このあと予定があるなんて初耳だし。
隼鷹はハルに対し、『タッハッハッ……彼はこのことは知ってるから。ごめんね』と言いながら、私の手をギュッと握っていた。いつもの隼鷹に比べ、手の力が、とても強い。
その手が告げる。
――出ろ
怒気のこもった声を聞いたわけでも、憤怒の形相を見たわけでもない。だけど、隼鷹の手の力の強さは、私に有無を言わさない迫力を感じた。隼鷹の怒りのような感情を、私は手の平を通して、感じていた。
だから私は、それ以上、口を開くことができなくなった。そんな私の様子をハルは心配そうに見つめるが、私は何も言うことが出来ない。ただ伏し目がちに、ハルと隼鷹の顔を交互に伺うことしか出来ない。
「……そっか。まぁしゃーない。んじゃ樽酒は次の機会にするか」
ふうとため息をついたあと、ハルはそう言って腰に手を当てた。
「ありがと。じゃああたしたち、もう行くから」
「あいよ。提督さんには何も言わなくていいのか?」
「大丈夫。彼にはもう出るって言ってあるから」
「そっか」
「うん」
私が口を挟まないのをいいことに、ハルと隼鷹が勝手に話を進めていく。ひとしきり話がついたところで、私は隼鷹に手を引っ張られ、店内から引きずり出される形で、ミア&リリーを後にすることになった。他のみんなはまだ球磨を胴上げしている。私たちの様子に気がついてない。
「んじゃまたな! 樽酒を飲む時は川内も来いよ!!」
「……」
「ありがと! んじゃまた今度!!」
笑顔で手を振るハルと、それに笑顔で応える隼鷹。私は
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