3. 気持ちは、伝えられない
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かー……」
みんなが煽り始める。
――通さないでハル
「そうだー! そしてそのあとは私とやせー……」
私も煽る。心とは裏腹に。気を抜くと消え入りそうな声を、精一杯に振り絞って。
「いいぞ! マイスイートハニーの次ぐらいにキレイだ二人共!!」
「……」
提督も二人を煽る。隼鷹は……私をジッと見ていた。笑顔の消えた、ちょっとだけ険しい顔で。
「……んじゃ、通すぞ」
「く、クマ……」
――お願い やめて
皆が笑顔で見守る中、球磨の薬指に今、指輪が通された。途端にキラキラと指輪が輝きだし、球磨はハルだけのひとになった。続いて……
「ん、じ、じゃあ、球磨も通す……クマ……」
「おう」
続いて球磨が、ハルの左手の薬指に指輪を通そうと、ハルの左手を取った。
『ハルと……球磨の』
『それこそ永遠にないわッ』
――信じたんだよ? 本気にしたんだよ?
私の本心とは裏腹に、球磨が手に持つ指輪は、ハルの左手の薬指に……
「なんか……照れるな」
「く、くまぁっ」
静かに、ゆっくりと、
――やめて……好きなのに……
今、通された。
「……」
「……ははっ」
ハルは今、私の、手の届かない人になった。ハルは、球磨だけのひとになった。
「おめでとう!!」
「ついに二人はふうふー!」
「二人とも一人前のれでぃー!!」
「暁、ハルは男よ?」
「!? と、ということは、そこに気づいたビス子は……」
「一人前のれでぃーね……フッ」
皆口々に、ハルと球磨に惜しみない祝福を送った。
「……」
私は、『おめでとう』と口に出すことができなかった。精一杯笑顔を浮かべるが、なんだかそれも難しい……笑おうとしても、顔が自然と歪んでくる。
急いで席を立ち、二人を優しいまなざしで見守る北上に、私は耳打ちをする。
「あのさ北上」
「んー?」
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「んー」
北上の返事も聞かず、私は自分の席に置いてあるバッグを持って、足早にトイレへと向かった。
「川内? どうした?」
「んー。ちょっとお手洗いに」
「そっか」
幸せの絶頂なのに私の様子に気づいたハルには、今の顔を見せないよう、気をつけながら。
「ハァッ……ハァッ……」
北上の店のトイレは、個人のお店にしては、ちょっと広めに作られている。トイレに入った私は洗面台に直行し、蛇口を盛大にひねって、水を大量に出した。
一度うつむき、そして改めて前を向く。目の前の鏡には、目を真っ赤にした、なんだか顔色が優れない、しょぼくれた女が写っていた。
――川内? どうした?
泣くな。今日は、私が大
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