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SAO−銀ノ月−
虹架
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「おはようございます」か「お疲れ様です」というのは有名な話で。地下アイドル崩れとはいえ、一応は芸能人の端くれである虹架ももちろん挨拶の礼儀ぐらいは心得て、先日は飛び出してしまった事務所へと足を踏み入れた。

「ああ、枳殻さん。昨日は本当に……」

「いいんですよ、悪いのはこの事務所じゃありませんし。今日はレッスンで来ましたから」

 大口の仕事を七色に横取りされたことに気を病んでいるのか、虹架がロッカーに荷物を入れようとする前に、そうして事務所の方から声がかけられる。もちろん気にしてないと言えば嘘にはなるが、ここに苛立ちをぶつけても何が変わるわけでもない……代わりに、どこかの彼に愚痴をこぼしてしまった訳だけど。

「あれ……枳殻さん、何か変わった?」

「えへへー。セクハラですぞ?」

「スキャンダルは止めてくれよー」

 そうして虹架が苦笑していれば、見る目は確かだと自称している事務所の方からそう揶揄されたのを、少し虚を突かれたものの何とか取り繕って。あいにくと期待されているような相手はいないと、ボロを出す前にロッカールームへ荷物を預けに行けば。

「あ……」

「……おはよっ!」

 同じくロッカールームに荷物を持ち込んでいたのは、昨日にちょっとした言い争いアイドル仲間。虹架の姿を見て硬直してしまっていて、ひとまず挨拶とともに扉の近くにあるロッカーへ荷物を仕舞うと、どうするかと虹架は思案して。

「えっと――」

「――あの! あ……」

「あ、あはは。お先にどうぞ」

 とにかく、昨日のことは気にしていない――と言おうとすれば、向こうも同じタイミングで声をあげていて。一瞬、いたたまれない空気がロッカールーム内に流れた後、ひとまず虹架は向こうに発言権を譲って。

「その……昨日はごめん。こっちも仕事なくて、イラついて」

「ううん、もう気にしてないよ。落ち着いて思い出したら、結構その通りだったし」

「その通り……?」

 深々と謝罪する彼女の表情が、虹架の言葉にポカンとしたものに変わっていく。いわく、SAO生還者という触れ込みだけで仕事を貰っている、というのが昨日に彼女から言われたことではあったが……それは、確かに虹架にも覚えがあって。目の前にいる彼女を含めたアイドル仲間に比べて、虹架本人には何があるわけでもないと。

「でも、わたしが皆に勝る点なんて、それこそ《SAO》を含めたゲームのことだから。これからは、ゲームアイドルの虹架ちゃん、なんてのもいいかなーって」

「え……?」

「要するに! このままだと、わたしだけ売れちゃうぞってこと! もちろん歌やダンスも負ける気はないんだから。ほら、一緒にレッスン行こ!」

 もう半ば以上に彼女のことは関係なく、ただの新し
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