虹架
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たが、あいにくと真逆の方向だったために虹架のみで。あくまでも演技だと言いはる七色を適当に流していれば、ふと思い出したかのように、そして話題を変えたいとばかりに聞いてきた。
「お姉ちゃんはさ、何でアイドルになりたいと思ったの?」
「もちろん、歌が好きだから! ……七色は?」
「あたしは……正直、売名行為って面もあるかな。もちろん、手を抜いたことはないけどね。あと……」
昨日まではあんなに悩んでいたにもかかわらず、歌が好きだから、などと即答できたことに、虹架が自嘲している間にも。こんな子供が天才科学者でアイドルだなんて、絶対に話題になるでしょ――と、うそぶいてみせた七色だったが、後にどこか憧憬めいた感情を中空に向け浮かべていて。
「……七色?」
「あー……あとね。あの《SAO》について調べてた時に、歌で中層の人たちを励ましてたプレイヤーがいたって聞いて……歌って凄いな、って思って」
「歌で……」
ふと、聞いてみれば。七色が照れくさそうに話した内容は、虹架にも縁があることだった。あくまで彼女はスキル上げの為に歌っていたのであって、中層プレイヤーの応援とまで考えていたかは分からないが、虹架もそれは言わないことにすると。それでも彼女の……ユナの願いを、知らずとも継いでいる者が自分以外にもいると分かって。
「そっか……」
「着いたぞ」
「……あんたは、もう少し愛想よく出来ないの?」
「こら、七色。……ありがとうございます、住良木さん」
「……レイン、だったか。一ついいか?」
「はい?」
その事実が虹架をどうしようもなく嬉しくさせてくれるとともに、車が虹架のバイト先の喫茶店へと止まる。先日この日本に帰ってきたばかりと聞いたのに、早くも運転手を勤めてくれているスメラギ――住良木に礼を言いながら、名残惜しいが車を降りてみれば、その住良木に呼び止められて。
「ショウキの奴に伝えておいてくれないか。次に会うまでに、まともなアバターにしておけと」
「お安いご用です」
「それじゃお姉ちゃん、またね!」
今までのアバターを失った彼への、住良木からの不器用な激励の伝言を受けとると。七色が手を振りながら車がどこかへ発進していく姿を見送れば、次に会えるのはいつの日になるのかな、などと早くも考えてしまう。
……ただ、今はそれ以上に、考えておくこともあった。
「よし!」
カバンに入れていた《オーグマー》を装着して、喫茶店へと入る前に彼にメッセージを打って。それを送信するとともにある決意を込めると、今日も頑張ろうと喫茶店の従業員専用口の扉を開けていく。
「おはようございます!」
バイトも終えて時刻はもう昼下がりだったが、芸能界の挨拶が
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