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ラピス、母よりも強く愛して
20優人部隊突入開始
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いた。
 九十九の妹とも出撃前に一夜の妻として結ばれ、多数の同級生まで孕ませた最低の男だと聞かされ、その全てに嫉妬した。
「流石皇子専用機、無傷とは恐れ入ったな。白鳥はどうした? まだ生きているのか?」
「ああ、こいつもさっき旗艦で自爆して死に損なった所だ。弾薬をくすねてやろうと思ったのに、点火済みだったから九十九だけ外して逃げてきた」
 隊長である九十九も、弾薬を使い果たすまで敵を沈めて、旗艦まで破壊したと聞かされて胸が熱くなる元一郎。
 しかし影山と名乗る皇子は、さらにその上を行って爆発までの瞬間に九十九と鉄神の残骸を救い出したと言った。
「俺の弾薬はやれん、これから死出の旅立ちをする所だ、邪魔をしないでくれ、お前たちは帰投しろ」
 戦友の立派な戦果を聞いて、自分も大輪の花を咲かせて散ろうと思ったが、こう言われてしまった。
「もう九十九は跳躍できない、自爆して死んだつもりだろうから、今頃三途の川でも渡ってる頃だろう。誰かが背負って帰らないと見殺しだが、それはお前にもできる、残った弾薬は俺が有効に使わせてもらう、どうだ?」
「ぐっ」
 無傷に近い電神なら、まだ数隻を沈められる。自分が自爆した所で中型艦一隻を道連れにするのが限度。誰が考えても九十九を帰投させる役は自分しかいなかった。
「草壁隊長じゃないが「ジンはお前たちの命よりも遥かに高価である、お前が死んでも必ず機体だけでも帰投させろ」って話だ」
「良かろう、貴様の言う通りだ。白鳥は俺が連れて帰る、弾薬もやろう。だが死ぬなよっ、雪菜も姫様も、貴様の帰りを待っている」
「ああ、泳いででも帰るつもりだ。まあ、あっちに帰っても殺されそうだがな、ははっ」
「はっはっはっ!」
 案外話せる快男児なのを知り、高笑いする元一郎。明人の死に場所は木連で、腹でも切って「責任」を取る羽目になりそうな男だが、自分でやったのではなく「一服盛られて縛り上げられてから女達に輪わされた」と言ったのも、案外嘘では無いと思えた。
「さらばだ、その腕で鉄神と魔神を連結させてくれ、弾薬は好きに使うと良い」
「ああ、母艦で会おう。予備の腕は秋山と三郎太にやったが、足ぐらい残ってるだろう、再装填して一休みしてから出直して来てくれ」
「分かった、秋山と三郎太も頼む」
 既に死んでいると思われる戦友も、機体だけでも回収するか、骨でも拾ってくるように頼む。
 母艦も火星を一周して戻ってくるとは思えないが、奇跡的に生き残った艦に拾われるか、本艦隊が到着して、その時まで生きていれば拾ってもらえる。
 もし地級艦隊が勝利すれば、魔神、鉄神の鹵獲は許されておらず、自分達の肉体まで鹵獲禁止兵器なので、残った動力で自爆しなければならない。元一郎も帰路は長い旅路になると思った。

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