暁 〜小説投稿サイト〜
ラピス、母よりも強く愛して
19第一回火星海戦
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 火星駐留艦隊。
 混乱を極める火星地上軍とは違い、いつでも質量兵器で地上を壊滅させられる宇宙軍は、何事もなかったかのように落ち着いていた。
 こんな場所にまでテロを起こせる組織は存在しないので、綱紀は弛みきって少ない娯楽に興じていた。
「おい、またハズレかよ、コロニーに落ちたぞ」
「コロニー落ちは罰金な。どけよ、俺様がバッチリ当ててやる」
 ルナリアンだとかマーシアンは人間ですら無いので、上空から燃え尽きない程度のゴミや排泄物を落下させ、棄民がいる難民キャンプに当てて大被害を起こすために遊んでいる宇宙軍。
 士官も娯楽に参加するほどで、後に回った方が修正が効いて、大気の動きによって流れる方向、船の速度による落下位置の変化を見れるので有利だが、先にビンゴを出した者が総取りの賭けなので順を争って遊びに興じていた。

「提督、木星方向より接近する船団ですが、艦隊全体にも知らせた方が宜しいのでは? 最近の規則違反や弛みには耐え難いものが有ります」
 さすがに上層部は仕事をして、天測から木連艦隊接近も察知し、以前から木星周辺で活動している団体、建設されている居住区、要塞なども確認されていたが、国家秘匿案件なので公表は許されていない。
「何を知らせるのかね? 存在しない物を公表するなど有り得ない、何を言っとるのかね君は?」
「ははははっ!」
 フクベ提督麾下の幕僚も腐りきっていて、1年の在任期間を延長、再延長され、交代人員は来ず、島流しにされて中央復帰が無理なのを悟った高官も、賄賂も接待の機会すら無い宇宙艦隊で、縦のものを横にする労力すら拒む役人根性に満たされていた。
「決定通りだ、木星蜥蜴は存在せん」
 提督の決断で提案を却下された士官も、地球上空にいて週末には休暇が取れるスーパーエリート達とは違い、最悪の僻地で腐って行き、今回の提案でさらに減点された。
 火星守備艦隊では、木連艦隊が目前に到着しても、名乗りを上げられようが宣戦布告を受けようが無視。
 火砲で攻撃を受けてからようやく「正体不明の船団により攻撃を受けたので、テロ行為、海賊行為に正当防衛射撃を開始する」と宣言して始めて反撃ができる。

 木連艦隊
 遮蔽しながら全速力で火星に到達した先遣隊、途中で減速は行わず、重力ターンと大気圏での摩擦によって減速を行う、最悪の選択をしていた。
 大半の船体が耐え切れずに爆発し、大気圏で燃え尽きるか、チューリップのようにユートピアコロニーに落下する事故が再現されるかと予測されたが、そんな船はラピスに消滅させられる。
「船体反転っ、逆噴射っ、減速開始っ! さらに火星大気圏内で重力転回を敢行するっ! 1ミリでも、1度でも突入位置を間違えると燃え尽きて死ぬぞっ!」
 女神様救出のため、最初から帰還を考慮しない先遣隊は、最大戦速で火星
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ