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ラピス、母よりも強く愛して
16火星革命政府誕生(複数)
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せん、地平線まで続いていますっ! これが、これが人間のやることなのでしょうか?」
 放送スタッフも泣きながら嘔吐し、生々しい死臭が渦巻く墓地で、何とか正気を保てた人物がアナウンサーに代わって代弁し、泣きながら放送を続けた。
「あちらに人がいます! 行ってみましょう!」
 ホロコーストの現場に出くわした人物は、生きた人間を埋葬している人非人を見付け、武器を準備しながら近寄っていった。
「あなた達っ、何をしてるんですかっ? 今すぐやめるんだっ、これは犯罪ですよっ!」
 ここに送り込まれた元重犯罪者たちは、取材班に暴力を振るうどころか、にこやかに手を振って挨拶して作業場に迎え入れた。
「おれ、あなほる、なまえ、かく、これにてをあわせる、きおくさせる、おれ、うめてもらう、てんごくにいく」
「何だって?」
 天国に行くというのは比喩でも何でも無く、墓標であるモノリスに接続されたサーバーの中で現実世界より遥かにましな生活を始められる。
 今までのように軽度知的障害、発達障害、人格障害、言語障害、識字障害などなど、あらゆる障害にまみれて劣った人物として生活し、労働や日常生活すら不可能で、犯罪によって金銭を得る以外に無い苦しい人生を終える。
 架空の世界では願えばなんでも叶い、スポーツでも、商売でも、研究でも、趣味でも、誰からも尊敬されて羨まれ、立身出世、恋愛でも家族でも欲しいものは全て手に入り、満足した人生を終えられる世界に転送される。
 このモノ達は機械で脳を置き換えてやらずとも、簡単な薬物を与えてこれからの将来を約束してやるだけで、全員苦しい人生を捨てて、オモイカネやラピス達が用意した「楽園」に旅立っていた。
「おまえにも、きこえる、このこえ」
 墓場で放送されている内容を脳に送り込まれ、素晴らしい世界の一端を見せられる取材班。
 そこには腐りきった上司はおらず、自分を愛していない配偶者も、自分を罵り恨んでいる子供もいなかった。
 美しい異性が自分を出迎え、ウィットに飛んだジョークで楽しませ、自分もその世界に行けば何の面白みも無い人物ではなく、楽しいジョークでヒトを楽しませ、どんな取材でも許可されて、圧力に屈せず、報道の自由を行使して「ペンは剣よりも強し」を実践できる。
「おまえも、これ、のむ、しあわせ」
 用意されている錠剤を手渡され、迷わずに飲む報道陣。自分用の端末を渡されて、空いている場所に、笑いながら自分で穴を掘って準備する。
 自分の穴を掘り終わった連中も手伝ってくれて、杭を打ち込んでモノリスも設置してくれる。
「ああ、ありがとう、ありがとう」
 全てが感謝に包まれ、先程の案内者とも笑顔で別れて上から土を掛けてやる。
 埋葬者は涙を流して喜び、腐った人生がようやく終わり、これから幸せにだけ包まれる人生が始まるのを喜び
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