12ラピス29号分割
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育てなさい、いいですね?」
その表情は、まるで人間の母親が娘を見守るような、暖かい物にも見えた。
「ママ……」
現実世界での呼び名で、火星での責任者を呼ぶラピス29号
「ではアキトが出発します、貴方は同じ船に乗って木星に行きなさい」
「はいっ」
ラピスは犯罪者や反逆者ではなく、今まで通り自分の分身として扱われた。
一旦脳梁を切断され、右脳と左脳が分離されたが、新しい半身を追加されて、記憶や小脳モデルもコピーされて開放された。
フォボスにある宇宙港
「ラピスッ、どこに行ってたんだ? もう火星ではくらせないそうなんだ、とうさんもかあさんも、ラピスやおばさんも、地球人とかネルガルに追われてるんだって、だから木星に行こう」
「え? うん…」
(このアキトは今までのアキトとは違う、私の左手もアキトを知らない。でも記憶や心は繋がっているはず、またこれから新しい絆を作って、思い出を紡いで行けばいい)
それがまた新たな「喜劇」を産むとは、思いも寄らないラピス達。
その頃、火星では監視小屋に引き取られたアキトが、ラピス29Lに抱かれて泣いていた。
「大丈夫よ、私がずっと一緒にいるから、ママも、アイちゃんもいるから、もう泣かないで。どこかの反政府組織がアキトのパパとママを保護したそうよ、ずっと隠れるか、木星に亡命しないと危ないけど、また会えるわ」
「うん、いつかあえるし、それに(ポッ)ラピスとわかれるのはもっといやだ」
「えっ?」
普通、両親と一緒に生活したがる子供が、友達であるラピスと共に暮らすのを選んだ。
「どうしてかな、ユリカだったらこんな感じしなかったのに、もしラピスと合えないと思ったら何だか……」
そう言ってまた、ポロポロと涙を流すアキト。
「アキトッ!」
抱き着いたラピスを愛おしそうに撫でて行くが、顔の右側に触れた時、手が止まった。
「どうしたの? こっちだけ顔がちがう」
例え親や自分でも気付かない、ラピスの僅かな違いに気付いたアキト。
「えっ? ううん、何でもないの」
そしていつも自分に触れている右手の感触や、動きが全く違うのにも驚く。
「そういえば、なんだか右手も違う……」
両親と引き離され、ラピスの様子も違う、アキトはとても不安な表情をしていた。
「違うの、ちょっと火傷しただけだからっ」
右手を隠して右を向き、アキトには左半身だけ見えるようにする。
「えっ? やけど? だいじょうぶっ」
苦しい言い訳だったが、不安な表情から、ラピスを心配する表情に変える事には成功した。
「心配しないで、もうママに治して貰ったから」
「ほんと? ほんとにだいじょうぶ?」
隠していた右手や顔に頬を擦り付け、何の絆も無い右半身に温もりが伝わって来る。
「だ、大丈夫、だから、他
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