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ラピス、母よりも強く愛して
06アキトに憑依している悪魔
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やきに勝てず、アキトの母は病んだ目のまま首を縦に動かした。
「そう、ユリカさんをアキトに近付けない、それだけで歴史は変わります」
 以前のアキトが選んだ女で、アキトの願いの一つであっても、ラピスはあの苦痛と怨念の原因となったユリカを許す事はできなかった、
「ユリカさんは何も悪くないでしょう、この後も、ただ眠ったように遺跡に取り込まれ、アキトの夢だけ見ていれば良かったのだから」
「ユリカちゃんが遺跡に?」
「はい、遺跡の独占使用を計ったモノ達は、ユリカさんを演算ユニットに組み込み、人の意思を伝える為の道具にしました」
「そんな、それよりアキトは? アキトはどうなったの!」
 涙を流し、自分の息子の行く末を確かめようとする母。
(それでいい、あなたはユリカの事など、何も考えなくてもいい)
 アキトの母が、アキトの心配だけして、ユリカがどうなったかなど、全く心配していないのに満足する。
「この程度で驚いていては、この続きは見せられません、次になさいますか?」
 拷問のようなアキトの実験シーン、それを見てしまえば、自分がそこにジャンプして、科学者達を全て殺してしまいたくなるが、そうすると二人の出会いも無くなり、今の自分も消滅してしまう、ラピス達は未来の座標をイメージ出来ないように調整されていた。そして、既にその未来は存在していない。
「いいえっ、見せて、アキトはどうなるの? 教えてっ」
 しかし母親にも、この後の光景を見せるのは、余りにも過酷であった。
「映像はやめておきましょう」
 自分のためにも、そのシーンを見るのは止め、元のテンカワ家に戻った。
「さらわれたアキトは、A級ジャンパーとして「実験体」にされ、五感を失いました。その後アキトと私は救出されましたが、火星の後継者に植え付けられナノマシンが暴走して、ずっと、ずっと苦しみ続けました」
 そこでアキトの母は、目の前の少女が血の涙を流しているのに気付いた。
「ラピスちゃん?」
「アキトは、コックさんになりたかったのに味覚を失ってしまったっ! 優しいはずのアキトが沢山ヒトを殺しながら、敵とユリカさんを追い続けたっ! まだ確立されていない技術でユーチャリスやブラックサレナを何度もジャンプさせて、それで、それで最期にアキトは…… どこかに消えてしまったっ!!」
(ユーチャリス? ブラックサレナ?)
 声を震わせ歯を鳴らし、血の涙を流して泣いている少女。
 得体の知れない存在だったこの娘が、本当にアキトの事を心配してくれているのだと知って、嬉しく、また愛しくも思えた。
「いいの、いいのよ、これからゆっくり変えて行きましょう、アキトも貴方も、きっと幸せになれるように」
 アキトの母はラピスを抱きしめ、そのシャツは血で染まったが、そんな事には構わず、強く抱き続けた。
「うっ
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