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ラピス、母よりも強く愛して
01過去への跳躍
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と横たわっているラピス。次第に受け答えするのも嫌になってきた。
『このように、彼らの規定によって、我々は送還される予定でしたが、彼らとの交渉の結果、貴方はジャンパーとなりました。よって帰還する時間も位置も、自由に選ぶ事が出来ます』
 ラピスはそんな物に何の価値があるのか、まだ分からなかった。
『彼、テンカワ・アキトは2178年から、2201年の間に生息しています。貴方はそこに戻る事も出来ます。またCCの正しい使用法など、可能な限りのデータを入手しましたので…… 私ハタダチニ、ねるがるニ戻ラナケレバナリマセン。でーたノ提出及ビ、遺跡ノ位置ノ報告。貴方ハ2100年前後ニ帰還スル事ヲ提案シマス』
 ユーチャリスは、明らかに何者かの命令に従い始めた。ラピスもその言葉で、ようやく頭が回りだす。
『サモナクバ私ハ、全テノ機能ヲ停止シ、搭乗者ノ安全ヲ保証デキナクナリマス。コレハ指令第1425項ニヨル特例……』
「どうしたの? ユーチャリス」
『失礼しました。私に対する指令は「彼ら」によって解除され、今後、私は営利団体の為に貴方の能力を利用する事を禁止されました』
 残念ながら現在のユーチャリスには、様々な制約や指令が存在し、全てを託すには値しない存在だった。
「あなたがそうしたいなら、機能停止すればいい」
 ラピスは、ここで死んでアキトに会えるなら、その方が幸せだと思えた。
『それはできません、私の任務は貴方達を保護する事です。ネルガルの指令は解除して下さい、私からもお願いします』
 ユーチャリスにとっても、ラピスは大切な存在だった。管理者としてでは無く、繋がった者として、失う事のできない存在であった。
「そう…」
 少し残念な気もするが、ジャンプできるならアキトを追いかける方法はある。もし今のアキトをイメージできれば、地獄と言う場所で巡り会えるかも知れない。ラピスはジャンプの方法を、ユーチャリスから引き出そうとした。
『やめて下さい、一人で彼を追わないで下さい。私も同行させて頂ければ、必ずお役に立ちます。それに死後の世界など存在しません、もう少し私に時間を下されば、必ず彼を捜索し再構築して見せます。それまで早まった行動を取らないで下さい』
 自殺しようと考えるラピスを見て、哀願して止めるユーチャリス。しかし「アキト」がいない今、自分がラピスを独占したような奇妙な感触と、嘆き悲しむラピスを見るに耐えない自分がいた。
『ラピス… 私は壊れています…… メンテナンスをお願いします。貴方がいなくなれば、私もいずれ崩壊するでしょう、死なないで下さい……』
 ユーチャリスから、大切な者を失う事への、恐れや悲しみのような感覚が伝わって来る。ラピスにもその気持ちは痛い程分かった。 
「ええ、もう少し待って、私が回復するまで」
『了解…』

 
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