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ラピス、母よりも強く愛して
01過去への跳躍
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「アキトッ、アキトォ……」
 ラピスはまた眠りに落ちていった。しかし今度は、辛く苦しみに満ちた眠りとなった。

『…はい、彼女は眠っています、情報提供ありがとうございました』
 幸い異星人の施設は、ただの中継所か研究施設だったらしく、教科書レベル知識は提供してもらえた。
『そうですか、本来我々来訪者との接触は禁止されているのですね』
 しかし、哀れな幼い生命体のため。 人工知能と異星人の一部も協力を惜しまなかった。
『以上のように、私達の世界は貴方達の残した遺産により、制御できない力を持ち、多くの命が失われました。この星系から立ち去る時は、全ての遺跡を処分して頂けませんでしょうか?』
 苦情を申し立て、歴史を変える提案をするユーチャリス。しかしそれは却下され、この会話はユーチャリスが立ち去った後、すぐに消去されると返答があった。
『ではせめて、片道の送還ではなく、彼女自身をジャンパーにする事は可能でしょうか?』
 回答は「可能である」と返信されて来た。

 ラピスは恐ろしい夢を見ていた、自分達の攻撃で死んだ亡者が群がり、アキトを地獄に引きずり込む夢。余分なデータの刷り込みは極力避けられていたが、アキトの言っていた「俺は地獄に落ちるな」と言う言葉から、地獄と言う概念を調べたのが仇になっていた。
「やめてっ! アキトは悪くないっ、アキトじゃない! 私がやったのっ!」
 すると、昔さらわれる時に見た、北辰のような亡者が寄って来た。
「きゃあああああっ!」
 何度もアキトを失う苦しい夢が続いていた。これもアキトとリンクして芽生えた「感情」という存在がラピス自身を苦しめた。
「いやっ、アキトを連れて行かないで… 殺さないで……」
 うなされ、うわ言を繰り返すラピスだったが、夢の最後に一度だけ、微笑んだアキトが現れた。
「ラピス、お前はもう自由に跳べる、無理に俺を追う必要は無い。ボソンの輝きは命の輝き、お前の命の火を燃やせば、どこへでも行ける。でも寂しくなって、また俺に会いたくなったら……」
「何? 何て言ったの? もう一度、もう一度教えてっ、行かないでっ! 置いて行かないでっ!」
 何故か肝心な部分だけは聞こえず、消えて行くアキト。ラピスの悪夢はそこで終った。

「もう一度…… 教えて… アキト」
 流れ落ちる涙を追って横を向くと、そこには懐かしいマントだけがあった。
(やっぱりいない)
 鎮静剤のせいか、感情の爆発は起らなかったが、夢の最後に現れたアキトは、自分の中の夢や幻ではなく、本物のような気がしていた。
『お目覚めですか、ラピス?』
 ユーチャリスに声を掛けられ、徐々に現実に引き戻される。
『貴方は3時間42分の間眠っていました、今も彼は発見出来ません』
「そう…」
 もう起き上がる気力も無く、呆然
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