広報官トーゴー ───最後の卒業生───
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。細かい指示を与えていると別の部下がファイルを見せに来た。
「委員長との質疑応答の回答があがってきました」
当日マスコミと国防委員長ヨブ・トリューニヒトのやり取りもあらかじめ決められている。
「それにしても国防委員長にしておくには惜しいな」
ざっと目を通してトーゴーは言った。
「うちに欲しい」
「ははは、そーゆー意味でしたか」
「お前らももう少しまともな文章を書け。次の委員長がここまで使えるとは限らないんだからな」
トリューニヒトの前の委員長の演説の多くはトーゴーが手直しした。それで昇進したというのが広報の伝説にもなっている。
「でも大佐の昇進のネタがなくなるのでは?」
「今以上の輩はそう簡単には現れないさ。俺が保証する」
「どんな保証なんですか、それ」
ブラウンにつられて周囲も笑ったが、それが専門でもあったトーゴーにはトリューニヒトの演説の力量がわかっていた。その外見も大きく影響している。
「その委員長から栄養ドリンクの差し入れが届いている。まったくもって抜かりのない男だ」
その瞬間だけは広報室が一つになり笑いで満たされた。
慰霊祭当日、トーゴーは建物に入るヤンを見つけた。
「壇上に立てとは言わないが、写真くらいどうだ」
「何もせずにいきなり写真だなんて、そこまでずうずうしくないです」
「アスターテの英雄じゃないか。気にする必要はない」
「では言い方を変えます。そこまで厚顔無恥ではありませんから」
ヤンの決意は堅い。
トーゴーもここで粘るつもりはなく、聞くのはタダ、写真たけでも承諾が取れたら儲けもの、くらいの気持ちだった。
進行表通りに慰霊祭は進んだ。
トリューニヒトの演説途中でのアクシデントは痛かったが、幸い一般の参列者はそれがあのヤン・ウェンリーだと気づいておらず、それにはほっとした。
遺族のインタビューも滞りなく終わり、予定外の質問をする記者がいたが、そこもうまく切り抜けた。
「どこの者だ?」
以降の軍の会見には呼ばないなどの措置も考える。
アスターテ回線でのヤンの六〇時間不眠記録には負けるものの、トーゴー個人の記録を塗り替え、後始末は部下に任せて官舎へたどり着くと、数日前のヤンの逆で彼を待ちかまえていた電話があった。
「……やはり赦せない」
呪詛にも似たつぶやきに深々とため息をつく。
「…………わかった……ほどほどにな。子供もいるんだ」
返答を待たずトーゴーはベットへ倒れ込んだ。
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