広報官トーゴー ───最後の卒業生───
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名札をつけた者たちの討論になった。そこでトーゴーはテレビを消す。
ヤンが不満そうな顔をすると
「どうせ台本通りのことしか言わない」
苦笑いしながら言い
「テレビで話している連中の八割はうちが雇っている。作戦のことをべらべら話されても困るし、かといって軍に詳しい人間がどこにでもいるわけがない。
反戦派の言うことはだいたい予想がつくから対応しやすい」
そう付け加えた。
「いくらお前をエル・ファシルの英雄と持ち上げても、それもリンチの所業があったからだ。それは隠せない。世論も見逃さない。
だったらせめて、それはリンチの家族だけにしておきたい。
皆が皆、リンチに賛同して逃げ出したと思うのか? それが作戦参謀の言い出したことだとしても、それを受け入れたのはヤツだ。最終的に命令を下したのはアーサー・リンチ少将。これは絶対に動かない。
だが当の本人はいない。戦死していれば死をもって償ったと庇うこともできるが捕虜になったことは明白だ。
だから俺は決めた。
リンチとその家族はマスコミに差し出そう。その代わり、彼の部下は見逃してもらう。
直属の部下まで責めて、あいつらが押し掛けたら家族から自殺者が出るかも知れない。子供は学校にも行けなくなるだろう。仕事をやめる者だって出てくる。リンチの命令に従っただけなのに、家族が捕虜になっただけでなく、残された者までさらし者にする権利がお前らにあるのか───説得材料としてリンチの官舎は教えた」
ヤンはうなだれて聞いていた。
軍人の、しかも少将の住まいなど手を尽くして調べればわかることである。トーゴーはほんの少しの手間を省いてやっただけだ。
そして部下にまでその罪が及ぶのか───これが民間人に向けて発砲した、というものなら、実際に手を下した自覚が本人にもあるだろう。リンチが逃げたくない者は別行動を取れ、そう個々に選択させたわけでもない。
「家族は今はハイネセンのホテルにいる。外出できないことにはかわりないが、電話も面会も取り次ぎには制限を設けているから静かに休めているだろう」
「軍が監視するってことですか」
トーゴーはやれやれとため息をついて見せた。
「あいつらなら同じフロアの部屋を取って、直接ドアチャイムを鳴らし続けるぞ。ああ、ホテルなんてすぐにバレた。深夜に官舎から脱出させたが、真夜中だって交代で見張っているんだ。
こっちも複数車両出したんだが、あっちの方が人数が多くて全車両がオマケ付きのままホテル入りだ。
直接ドアは叩かれなくても一日中外線からの電話が鳴りっぱなしでいいのか? 電話や面会の取り次ぎをホテルに申し出るな、とは命令できない。一人でやっているならともかく、大勢が個々だから質が悪い。一人ならメシも食うしトイレにも行くだろうが。
親戚や本当の知り合いかど
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