暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第4章 それは歪な正義の味方
第102話 始まりの朝
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 陽の差さない、鋼鉄に覆われた冷たい部屋。
 その中で目覚める朝は、二度目になっても慣れる気はまるでしなかった。朝なのか夜なのかもわからなくなる世界に留まっていて、僅かな期間で順応できる人というのは、世界にどのくらいいるのだろう。

 自然に開かれた瞼をこすり、俺はぼんやりした頭を覚ますために身を起こす。ベッドに取り付けられたデジタル時計でしか、この部屋の中で時間の概念を認識することは出来なかった。

「まだ、六時ちょっとか……」
『キショウジカンヨリ、ジャッカンハヤイデスヨ。アト約一時間デ、チョウショクノオジカンデス』
「……いーんだよ、別に」

 こうしてお節介な人工知能と喋りながら、四郷は十年間もここで過ごして来たのだろう。そんな彼女と、俺は今日から戦うことになる。

 ちょっと年下くらいかと思ってた女の子が、実は八歳年上のお姉さんだと知ってしまった後だと、どう接すればいいのか悩むところではあるが……四郷本人に取っては知られたくない身の上話だったのかも知れないし、今日のところは何も知らない振りをしておくかな。

 ワキワキとマニピュレーターを動かして、「オセワシマスヨ」といいたげな様子を見せている人工知能をガン無視しつつ、俺は洗面台で顔を洗い――例のコスチュームに袖を通した。
 なかなか慣れる気がしないこの施設に引き換え、このダサカッコイイ服は随分早く俺の身体に馴染んできているようだ。

 ――しかし、何の苦もなしにこれを着れるようになるためには、まず俺自身の意識改革が必要になるだろう。これは時代の最先端を行く、ものすごくイケてる次世代ファッションなのだッ! ……と。
 そして、そう自分に言い聞かせるたび、洗面台の鏡に映る現実に打ちのめされる……という流れも、これで何度目の経験になるのだろうか。
 どれだけ悩んでも解決することのない問題に辟易し、俺は深いため息をつく。次いで、デジタル時計の無機質な数字表記を見遣った。

 布団から身を起こし、顔を洗い、着替えも済ました。ここまでしておいて、今更二度寝も出来ない。
 俺はベッドに腰掛けると、散々救芽井に読まされ、隅々まで内容を頭に叩き込まれていた「着鎧甲冑の運用マニュアル完全版」を改めて読み返すことにした。高校入試の本番直前を思い出すよ、全く……。

 ベッドの傍に積んでいた荷物の中から、厚さ三センチ程の教科書を取り出し、装備の運用手順の項から目を通していく。
 どの装備をどんな時に使うか。それを常に頭の中のビジョンで再現しながら覚えなくては、そうそう記憶に残せないものだ。
 俺は瞼を閉じ、自分が置かれた状況を装備に応じてシミュレーションしつつ、特訓のおさらいをするようにイメトレを行う。

 この本は元々、「正式に着鎧甲冑を運用する資格を取った人間」の
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