第101話 救芽井の涙
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い傍に居てやる。それが俺にできることであり――全てだ。
俺は彼女の綺麗な茶髪の上に手の平を優しく乗せ、そのまま「の」の字を書くように撫でてやる。
やがて俺を抱きしめる力は次第に緩んでいき、救芽井の身体は俺にもたれ掛かったまま、動かなくなってしまった。
「……ったく、でっかい赤ん坊だよな」
まるで寝かしつけられ、いい夢を見ている子供のように、幸せそうな寝顔を浮かべている。そんな彼女の表情を前に、つい俺もクスリと笑ってしまった。
俺のことで、よほど苦しんでいたのだろう。泣き疲れた分もあってか、すっかり寝入った様子であり、今ではくぅくぅと可愛らしい寝息を立てている。
彼女の頭をゆっくりと枕に乗せ、静かに布団を掛ける。そして、枕の近くに置かれている例のぬいぐるみ達を、彼女の傍に配置した。
「……お休み。救芽井」
お前の涙も不安も、全部杞憂で終わらせてやるからな。だから今は、ぐっすり寝といてくれよ。俺、簡単には負けないからさ。
――最後に、そんな届くはずのない約束を立てて彼女の前から立ち去り、俺達の間を自動ドアが遮断する。
その瞬間を見届けて、俺も自室への帰路についた。
……そして、夜が明けて。
運命の一日が、静かに幕を開ける。
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