第101話 救芽井の涙
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かよ。
彼女の身体は想像以上に柔らかく……豊満な胸の感触が俺の胸板に伝わり、甘い吐息が耳をくすぐる。次いで手の平に伝わる柔らかさを感じつつ、手を這わせるように背中を撫でる。
……これが古我知さんとの戦いの後、矢村を落ち着かせるためにほぼ無意識のうちに取った、必殺抱きしめ攻撃だ。矢村の場合はこれで大人しくなってくれたが、救芽井にも通用するかどうか……。
「あっ……んん……」
すると、彼女は俺の真似をするように背中に腕を回し、まるで抱っこをしてもらう子供のように、ヒシッと俺にしがみつく。
さらに、甘えるように俺の頬に自分のソレを擦り寄せ、気持ち良さそうな声を漏らしていた。
――どうやら、落ち着いてくれたみたいだな。気がつけば、すっかり泣き止んでるみたいだし。
「……そりゃあ確かに頼りないかも知れないけど、カッコ悪いかも知れないけど、それでも俺――全力で戦うよ。約束する」
「……うん」
「今回が最後でいい。もう一度、俺のこと、信じてくれるか?」
「信じてる……最後じゃない。龍太君のこと、ずっと……信じてる」
ふと、背中に感じる彼女の力が強まった。痛いくらい、俺を強く抱きしめているのがわかる。
「そっか……ありがとうな。傷のことは大丈夫だから。俺は大丈夫だから――明日のコンペティション、やらせてくれるか?」
「それは……」
俺は優しく囁くように、なんとか彼女の説得を試みる。俺の傷のせいでこれ以上彼女を惑わせないためにも、どうにかここで決着を付けたい。
ここまでは抱きしめ効果(?)のおかげで、俺の言うことは素直に聞いてくれていたが、コレはさすがに難しいのか……なかなか返事が返ってこない。
やっぱり怖いのだろうか……? コンペティションに敗れるのも、俺が傷付く可能性があるのも。
だが、こんな「限りなくアウトに近いアウト」を侵してまで説得に掛かっている以上、失敗は許されない。俺は駄目押しに何かを言おうと口を開き――
「……失敗しても、いい……負けてもいいから……また一からやり直せばいいから……無事に帰って、またこうして、傍にいて……!」
――縋るように、甘えるように、願うように呟かれたその言葉が、俺を制した。
背中に感じる、震えた手の感触。俺の服を強く握りしめ、破けそうなほどに引っ張っているのがわかる。
「……ああ。こんなんで気が済むなら、いつでもやってやる。――だけど、俺は負けないからな」
彼女が、俺の身をここまで案じている。コンペティションに負けても構わない、と言うほどまでに。
何故そこまで俺にこだわるのか、少し理解に苦しむところはあるが――彼女を安心させてあげられる方法が、少しだけ見えた気がする。
……いつだって、こうして近すぎるくら
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