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フルメタル・アクションヒーローズ
第101話 救芽井の涙
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、またあなたに何かあったら、私もうっ……!」

 ――もしかしたら、彼女も四郷研究所の真実について、薄々感づいているのだろうか。瀧上凱樹――その影に。

 しかし、参ったもんだ。落ち着かせるどころか、とうとう本格的に泣き出してしまった彼女に、俺は頭を抱えるしかない。

 こうなったら――もう、アレをやるしかないのか? 彼女にも通用するかはわからないがッ……!

「……なぁ、救芽井」

 俺は一か八か、目尻に大粒の涙を貯めていた彼女の傍へ身を寄せ――小指同士を、僅かに触れ合わせた。俺の感覚神経が彼女の柔肌を認識した瞬間、俺の脳に「救芽井に自分から触りに行った」事実が伝達される。
 その現実を受け止めた時、俺は体の芯――胸の奥から込み上げて来た熱を抑えるように、唇を噛む。顔が熱いのはきっと……気のせいではないのだろう。

「えっ――!?」

 だが、指が触れるだけで過剰に反応したのは俺だけではなかったようだ。救芽井は俺以上に鼻先まで赤くして、信じられない、という表情で視線を泳がせていた。俺に触れられた弾みでタガが外れたのか、今では透明な雫が、ボロボロと零れるように彼女の頬を伝っている。

「俺、確かに頼りないかもしれないし、これからも心配かけることにもなるかも知れない」

 しかし、ここで退くわけにもいかない。俺は思うままの言葉を並べながら、彼女の手の甲を撫で――腰に手を回す。最初に小指が触れ合った時のショックが強すぎたせいか、それより遥かにスゴイことをやろうとしているのにも関わらず、意外なほど胸の動悸は少ない。

 心配は……恐らく、古我知さんの時よりも掛けることになってしまうだろう。正直な話、一国を滅ぼしたような男と戦うことにもなりうる今、何もかもが丸く収まるとは到底思えない。

 だが、俺が聞いた話をそのまま彼女に伝えたら、間違いなくコンペティションどころではなくなってしまうだろう。その時こそ、所長さんが最も恐れていた事態に発展してしまうんじゃないだろうか……。

 そんな「余りと言えば余りにも危険な場所にいるというのに、何も話せない」というジレンマが、俺の胸を締め付けるように全身を駆け巡る。その感覚を代弁するかのように、俺は腰に回した自分の手に力を込めた。彼女の身体を、引き寄せるように。

「りゅ……龍太……君……!?」

「だけど、やっぱり――信じてほしい。ここまで来て引き下がったんじゃ、やっぱし格好が付かないから、さ」

 そして――抱き寄せた彼女の温もりを浴びて、俺は格好の付かない建前を囁いた。
 「誰かの命を救うために戦う」。そんな漠然とした夢でも、家族と一緒に叶えようと生きてきたお前がいじらしくてしょうがなくて、どうしても支えたくなった。――そんな歯の浮くような動機、知られてたまる
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