第101話 救芽井の涙
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んとか口元を吊り上げようとしても、彼女の瞳に意識が集中してしまい、顔の筋肉に力が入らない。……いや、正確には力が入らないというより、うまく表情がコントロールできないんだ。
どれだけ空気を読んで作り笑いを浮かべようとしても、俺の顔は固まったまま。まるでぶっつけ本番で試験をやらされている面接初心者の如く、俺は凍り付いた表情のまま、彼女をただ見詰めていた。
「あ、あの、龍太君……? も、もしかして怒ってる?」
「い、いやいや、そんなことねぇって」
――そんな顔をしているんだろうか、俺は。少なくとも、彼女にはそう見られている、ということなんだろう。
ここに鏡がない以上、自分がどんな表情をしているのか確認する術はない。仮にあるとするなら、彼女の瞳にぼんやりと映る自分の姿を見ることくらいだ。
「りゅ、龍太君……そ、そんなに見詰めちゃ……やだ……」
「え? あ、あぁ……すまん」
いつの間にか、俺はそれを実践していたらしい。救芽井は桃色に染まる頬を隠すように、俯いてしまう。
……いかん、このままだとまた矢村の時みたいな沈黙が訪れてしまう! さっさと本題に移らねば……!
「――あのさ、聞きたいことがあるんだ。……なんか、お前が悩んでるって話を聞いてさ。出来れば相談に乗ろうかなーって来たんだけど」
「えっ? ――そっか、矢村さんから聞いたのね」
「え……よ、よくお分かりで」
「あの娘、そういうのすっごい目ざといのよ。……そんなに、顔に出てたのね」
彼女は一瞬だけ驚くように目を見開くが、すぐに納得したように頷き、口元を緩めた。矢村の鋭さを認めている――ということは、悩んでいる事実は確かってことか。
「ねぇ……龍太君、明日のコンペティションなんだけどね……やっぱり、私が出る」
「――はぁっ!?」
事実を認めたからには、何の悩みなのか話してくれるのかと思えば――彼女はいきなり、そんなことを言い出した。当然ながら、俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。
この期に及んでお役御免かよ!? 確かに頼りないとは思うが……。
「お昼のあの時に見た、あなたの傷……あれは、私の付けた傷なの。もし明日、あなたの身にまた何かあったら……」
「ま、待った! そりゃあ、確かに俺なんかに任せるのは頼りないかも知れんが、『競争』なんだから命取られるようなことにはならないだろ? それに、『救済の超機龍』は俺にしか使えないんだし――」
「私が実家から持ってきた『救済の先駆者』があるわ。確かに性能面で不利にはなるけど、最も実績のある着鎧甲冑なんだから向こうも納得するでしょうし……」
「……なんで、そんなに俺にやらせたくないんだよ。それに傷の話は、もう終わったんじゃなかったのか?」
いつの間にか彼女の作り笑いは消え去り
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