第100話 明かされる真実と括られた腹
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「新人類の身体」に内蔵された脳髄を中核とし、全身を当時のアメリカ軍が提供していた最新兵器で固められた、全長十メートルに渡る鋼鉄の巨体。
かつて松霧町のヒーローと呼ばれた瀧上凱樹を、最凶の鬼神へと変貌させた、最大の因子。
それが、俺に知らされた「新人類の巨鎧体」という存在の意味だった。
「概念としては、『新人類の身体』の活動範囲を広げるために開発されたサポートメカ。だけど、その実態はそんな表現には収まらないほど、『新人類の身体』の戦闘力を大幅に高める結果を出していたわ」
「そんなもので……瀧上さんは何を?」
「――これよ」
彼女は俺と一切目を合わせようとせず、机から取り出したリモコンを、ベッドの正面にあったテレビへと向ける。
そこに映し出された世界は――こことは遠い次元のような、荒涼とした黄土色の地平線だった。雲一つなく澄み渡る青空と、激しく照り付ける陽射し。そして、荒れ果てた大地。
……もしそれだけだったなら、何かのドキュメンタリー番組でもやってるのかと誤解してしまっていただろう。
だが、そんな悠長な勘違いすら許されないほどの光景が、俺の眼前に映っているからには、目を逸らすわけには行かない。決して無視は出来ない、四郷姉妹と瀧上さんに起きたことを知るためには、必要だからだ。
――たとえ画面全体に、焼け焦げた死体の群れが広がっていようとも。
「うっ……!」
「耐えられないなら無理に見なくてもいいのよ。私が勝手に流してるだけだから」
――別に、人生で一度も死体を見たことがないわけではない。歴史の教科書で残酷な死体を描いた絵や、当時の写真を見たことがある奴は少なくないはず。
だが、映像として見ると全く違う。……「動かない」んだ。人として生きて、些細でも何かを成してきたであろう存在が、抜け殻のようにピクリとも動かない。人の形をした消し炭のようにすら見えるその死体の数々は、人形のように不自然な格好のまま、見ているだけで焼け焦げてしまいそうな大地の上に倒れているのだ。
この映像を撮っているカメラマンが息せき切って走っているのとは対照的に、不気味なほど「動かない」。写真ではわからない恐怖と、哀愁がそこに渦巻いているようだった。
『凱樹ッ! お願い止めて、もう止めてッ! 相手はあなたが守ろうとした市民軍よ!?』
『こいつらは俺の正義を認めず、悪魔だと言い放った。今はただ、その粛清を行っているだけだ!』
『それは、あなたが政府軍の女子供までッ――』
その時、二人の男女が言い争っているかのような声が聞こえて来る。場所は明らかにアフリカのような荒野だというのに、喋っている言葉は間違いなく日本語だ。
……にしても、この男の声、どこかで……?
「これは、中東のある紛争
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