第100話 明かされる真実と括られた腹
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完全な戦闘用に作られた凱樹の身体と違って、『新人類の身体』として売り出すために救命システムを組み込まれてる鮎子は、迷わず助けに行ったらしいわ。あんなことがあっても、人間でなくなっても……あの娘の優しさは変わらなかった」
「……だろうな。それでなきゃ、あんなに頑張れることに説明がつかないよ」
脳裏に過ぎる、水上バレーでの出来事。久水を助けるためのあの無茶を見れば、彼女の行動も容易に想像できる。
「……でも、背中から手を生やす彼女の姿を見た野次馬は、火事に囚われていた親子を助ける姿を見ても、『化け物』としか呼ばなかったそうよ。助けたのは鮎子なのに、『その親子を離せ』って、石まで投げられたらしいわ」
「そんな……無茶苦茶じゃないか」
「――そこに現れたのが、久水兄妹だったみたい。梢ちゃんたら、物凄い剣幕で野次馬を叱り付けたらしいの。その時現場に居なくて、鮎子の活躍を見ていなかった茂君も、事情を聞いたら真剣に一喝して全員を黙らせたらしいわ。最後には、こてんぱんに論破された民衆が鮎子に拍手を送ったそうよ」
「へぇ、あの久水と茂さんが……」
「そのあと、帽子を鮎子にきちんと返した時から、二人は親友になったらしいの。……私、正直言って、感動したわ。あの日から友達どころか、外にすら出られなかった妹が、一気に飛び越えて『親友』なんて作っちゃったんだから……」
――その時だった。自分のことを語る上では、どんなに壮絶で悲惨な状況であっても淡々としていた彼女が、目に涙を浮かべたのは。
「その梢ちゃん本人から聞いた話だと、彼女が最初に鮎子を見て感じたのは『昔の自分に似ている』ってことだったらしいの。……そこから、あなたの話を初めて聞いたわ。あなたが梢ちゃんの心を開いて、その梢ちゃんが鮎子の心を――不思議な繋がりがあったものね」
「い、いや別に俺はそんな……」
「……でも、鮎子の方はあなたに対しては、『昔の凱樹に似ている』って感じていたみたい。私も、実際そう思えたわ。あなた、河川敷で帽子を拾ってあげたんでしょ? あの娘、凱樹にも同じようなこと、してもらったことがあったのよ」
「瀧上さんに……?」
そういえば、あの時……四郷は帽子を受け取った瞬間、どこか悲しげだった。初恋相手の瀧上さんを思い出して、過去の自分を憂いていたのか……?
「――その凱樹は、今も『ヒーロー』になろうとしている。救芽井エレクトロニクスが相手とあらば、必ず鮎子に勝たせようとするでしょうね」
「……ッ!」
――確かにそうだ。昔話に花を咲かせてばかりはいられない。それだけのことをやってきた瀧上さんを擁している四郷研究所に、まともな勝負事が通用するんだろうか……?
「恐らく、伊葉さんも何か考えがあってここに来ているはず。もしかしたら、このコンペティシ
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