第100話 明かされる真実と括られた腹
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後まで見てくれたわね。正直、ここまで付き合ってくれる可能性はないって思ってたわ。ありがとう」
「そんな礼はいらないよ。それより、このあと、どうなったんだ?」
俺は差し延べられた手を押さえると、椅子を杖がわりにして立ち上がり、彼女と向き合った。
――ここまで知った以上、もう後戻りは出来ない。知るところまで、貪欲に知る時だ。
所長さんはしばらく考え込むように唇に手を当て、次いで俺の傍を通り過ぎ――あの写真を手に取った。
「『粛正』が行われたわ。あの市民軍の本隊と、政府軍の中核だった首都を相手にね」
「なッ……!? いくらなんでも、そんなこと……!」
「そんな荒唐無稽なことを実行できるのが、凱樹と『新人類の巨鎧体』の力なのよ。彼は『相棒』として『新人類の身体』に改造させた鮎子を連れて、国という国を滅ぼしたわ。その戦いの死傷者は、双方の軍を合わせて七千人を越えた……」
「――それが、『十年前』に四郷が改造されたっていう……?」
「そう。凱樹も、自分一人ではさすがに無理があると思ったんでしょうね。それに、私と離れて暮らしていたから、あの娘は凱樹の豹変を知らなかった。――結果、鮎子は現実の全てを見せ付けられて……人格が崩壊した」
腕の震えを見れば、彼女の写真を握る手に力が込められているのがわかる。自分だけではなく、妹までもが……愛したはずのヒーローに蹂躙されたという事実を知らされた今、その意味を探るのは野暮の極みであろう。
「だけど、彼の『快進撃』もそこまで。自分は『正義』を成したと信じて疑わなかった凱樹は、『新人類の巨鎧体』の度重なる戦いによる中破を機に、日本に『凱旋』しようとしたの」
「人を散々苦しめておいて、『凱旋』か……」
「もちろん、彼を英雄として迎える人間は誰ひとりとして存在していなかった。圧倒的な戦力を持っているなら、どんな人格であっても『救世主』として祭り上げられる紛争地帯の人間でさえ、彼だけは受け入れなかったのだから。平和主義の日本なら、なおさらよね」
「それで……どうなったんだ?」
俺は踏み込んでいい境地なのかわからないまま、怖ず怖ずと尋ねる。しかし、返ってきた答えは意外にも明解で――非情だった。
「――敗れたわよ。『新人類の巨鎧体』も損傷して使えず、自分自身も戦闘に疲弊し、廃人同然になった妹は加勢もしない。そんな状況で機動隊の物量攻撃に晒されたら、さしもの凱樹も成す術がなかった。だけど、彼は渾身の力で私達姉妹を連れて逃げ出し――この丘にたどり着いた」
「それで、ここに研究所を……?」
「ええ……。日本政府にもアメリカ軍にも見放された私達だけど、貰っていた莫大な資金だけは有り余っていたからね。昔、私と凱樹が海外に渡る前は……三人でいつも、ここへキャンプに来ていたわ。彼も名実共に
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