第100話 明かされる真実と括られた腹
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じたからだ。
――こんなことやってる奴には負けない、負けてたまるか……!
殺戮の異常性を真正面から見続けたせいで、恐らく俺も感覚が麻痺してしまったのだろう。普通ならこの狂気に怯えて、映像を拒絶するどころか部屋を飛び出している。救芽井に出会う前――ただの一般人だった頃の俺なら、間違いなくそうしていた。
『よく見ておけ鮎美! 世界を守るヒーローに盾突いた悪の手先が、どのような末路を辿るのかッ!』
『やめてッ! お願いだからもうやめてッ! やめてよぉおぉぉッ!』
やがて、状況に変化が訪れる。さっきから巨人の周りを動き回って、制止を呼び掛けていた十八くらいの少女と、巨人が初めて目を合わせた。やり取りを見ていれば、この悲痛な叫びを上げつづけている少女が、当時の所長さんであるということは容易に想像がつく。……本当に苦しいのだろう。既に叫びすぎて何度もむせ返っているのに、未だに声を搾り出そうとしている。
だが、テレビの中にいる瀧上さんはまるで聞く耳を持たない。すぐに所長さんから興味を失ったかのように巨大な顔を背けると、残る「市民軍」の生き残りににじり寄る。
一方、小銃で武装しているその生き残りは、最後の力を振り絞って反撃を試みた。激しく火を噴く銃と共に、それを握る本人も火を吐くように叫んでいる。
……だが、無情にも「新人類の巨鎧体」は強すぎた。
決死の反撃も、いたいけな少女の叫びも、何一つ届くことはなかったのだ。
泣き叫び、暴れている生き残りの青年を掴まえ、両手の握力で粉々に握り潰す。そして、「新人類の巨鎧体」の握り拳の隙間から溢れ出す、彼の血が――この映像を締め括ったのだった。
見せるべきものを全て見せ、役割を終えたテレビは電源を切られ、そのビジョンは漆黒に覆われる。
その瞬間、俺は気づいたことがある。
当時の瀧上さんの声。
それは「必要悪」の声色と、俺の記憶の中で――完全に合致していたのだ。
「――このあと、映像を撮っていたカメラマンも凱樹を非難して殺されたわ。結局、あの中で生き延びた『人間』は、私一人だった」
「……」
再生が終わって真っ黒になっても、俺の視界はしばらくテレビから離れなかった。この悲劇が終わったと実感して膝を着いたのは、「今の」所長さんに声を掛けられた時だ。
――所長さんの、四郷研究所の技術力ってのは、あんな化け物まで生み出したってのかよ……! 「新人類の身体」って、一体……一体なんなんだッ!?
心の奥に渦巻く疑念と焦燥に翻弄される余り、俺は無意識の内に床を殴り付けていた。その直後に我に帰って顔を上げると、そこには済まし顔の所長さんが立っている。
……まるで、俺がこういう反応をするとわかりきっていたかのように。
「……よく、最
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