第100話 明かされる真実と括られた腹
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地域の映像よ。ちょうど、今から十年前だわ。この頃は政府軍と市民軍の抗争が続いていて、政府軍が圧倒的に優勢だったの。――私達が来るまでは、ね」
「十年前……」
にわかには信じがたいが、四郷の実年齢は二十五歳なのだという。そんな彼女が「新人類の身体」になったのも、十年前。
わざわざこんな惨たらしい映像を見せるからには、何かしらの繋がりがあってのことなのだろう。何の関係もなしにこんな有様を夜中に見せられたら、たまったもんじゃない。
「……そろそろ映る頃かしら。一煉寺君、もし『向き合う』つもりになってくれてるのなら、これだけは見逃しちゃダメよ」
「いきなり何を――!?」
どこか意味深な彼女の物言いに、眉をひそめた瞬間――俺は、全身が凍りついたように動けなくなってしまう。
眼前に映る世界で繰り広げられる、殺戮の嵐。舞い散る血しぶきと人体の一部。
そして――戦場を支配する、赤褐色の巨人。
「これが――瀧上さん、なのか……!?」
機械らしく角ばった身体を持つ、その異様な姿形の存在は、数多の「生きている」人間をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、といった行動を、ただ淡々と繰り返していた。
――この表現は、比喩ではない。地面に転がる「動かなくなった」人間の身体が、それを証明している。
見たところ、俺達日本人よりは肌の黒い人々が暮らす国らしい。だが、原形を留めないほど痛め付けられた挙げ句、巨人の胸部から放たれる火炎放射に焼かれた姿ばかりが映るこのビジョンでは、元々の肌すらほとんどわからない。
黄金に輝く鋭い両目。力強さを感じさせる、図太い鋼鉄の手足。白と赤褐色を交互に使った、昔のアニメのヒーローにあるような色使い。
そんな古きよきスーパーロボットが、現実世界にそのまま飛び出してきたかのような存在は今、テレビの中で凄惨な命の蹂躙を続けている。
「な、なんだよ、これ……なんなんだッ!」
「これが『新人類の巨鎧体』よ、一煉寺君。彼が正義という名の狂気に包まれて生まれた、いびつな化け物。その威力は、彼の願いを叶えるには十分過ぎたわ」
まるで他人事のように冷めた口調で所長さんが話している間も、血と肉と悲鳴が飛び交っている。はじめはショックの方が上回っていたため何も感じなかったが、次第に吐き気を催すようになってきてしまった。
「う……!」
――だが、最後の瞬間まで目を逸らすつもりは毛頭ない。四郷との関連諸々を抜きにしたって、こんな残酷過ぎる背景を知らんぷりで済ませられるかッ!
俺は固く閉じた唇を片手で抑えながらも、かじりつくように映像を凝視する。下らない理由かも知れないが……ここで目を逸らしたら、「新人類の巨鎧体」とやらにも当時の瀧上さんにも「負けた」ことになってしまうと感
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