第99話 爪痕の姉妹
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武器だけを壊して、民衆を苦しめていた資産家は命を取らない程度に懲らしめて……。彼の活躍を聞き付けたアメリカの軍事機関が、兵器開発の研究対象として目を付けてきたこともあったわ。おかげで、莫大な研究費用が手に入ったんだけどね……」
その時、彼女の様子に僅かながら変化が訪れる。それまでは嬉々として……とまでは行かなくとも、慕い続けていた瀧上さんの活躍を懐かしむように語っていた声色が、次第に沈んでいくのがわかった。
……四郷の本体のことを話した時と、同じ空気を感じる。今の彼女に通じる背景に、近づいているってことか……。
「……だけど、その行為は次第にエスカレートしていった。武器だけではなく命を奪い、自分と同じ……いいえ、自分より年下の子供でさえも、『正義に反する』なら敵として見るようになってしまったの」
「なっ!?」
「人命を優先して、テロリストの殲滅より難民の救出を優先した結果、その見逃したテロリストに、護ろうとした村を全滅させられたのがきっかけだわ。彼は単身で全てを守り切れないなら、守り切れるように『敵の数』を減らそうと考えたのよ。そのために私とアメリカの兵器研究機関に作らせたのが――これよ」
瀧上さんが纏う、あの例えがたい殺気。その背景にある悲劇を語りつつ、彼女はさっき俺が漁っていたデスクへ向かい、そこから一枚の書類を取り出した。
その艶やかな手に触れている、書類の正体――それは、あの「新人類の巨鎧体」と書かれた謎の設計図だった。
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