第96話 逡巡と懺悔と後悔と
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、かな? ホラ、俺が所属してることになってる救芽井エレクトロニクスって、そういうコトのための機械を作るのが仕事なんだし。それに、俺がかじってる少林寺拳法にも『不殺活人』って概念がある」
「なるほど。では、例えばの話だが……君が『人命救助』がモットーの救芽井エレクトロニクスに、正式に身を置いた人間であるとしよう。目の前で助けを求めている人間が『大勢の人間を危めた大罪人』であったとして、もし『助ければ同じことを繰り返す』と解りきっていたとしたら……迷いなく助けられるか?」
「な、なんですか、それ?」
「いいから答えてくれ。君の率直な意見を知りたい」
俺が思うところを述べた途端、次はやけに限定的なシチュエーションを持ってこられてしまった。大勢の人間を危めた大罪人……? 何の話なんだよ、コレ……?
――しかし、「助ければ同じことを繰り返す」……か。もし助けたとして、それで本当に誰かが犠牲になるとしたら……?
……いや、着鎧甲冑は『人を助けるために』作られた技術だ。それに、人を『活かす』ことは少林寺拳法の教えにもある。
――「人を救うため」に在る救芽井エレクトロニクスに付いていながら、「不殺活人」を目指した少林寺拳法に帰依していながら、それらを捨てる真似なんて、許されるはずがない!
「――助けますよ。……きっと、迷ったり、悩んだりはするかも知れません。それでも、見捨てる方向には進めないでしょうね。そうするには、取れるはずもなくて――取る気も起きない、誰かさん達の許可が要りますから」
家族みんなで描いた夢のために、敵うはずのない敵へ挑もうとしていた――生真面目で、融通が利かなくて、頭がいい癖にいつもがむしゃらで……それでいてひたむきで、一生懸命な少女。
俺を守るためとか言いながら、一人で勝手に鍛えてたり、俺にベタベタに甘かったり、俺のためとか言って道院に引きずり出したり……。そして、挙げ句の果てにいきなり厳しくなったりして――今ある俺を、ずっと傍で育ててくれていた、一番の家族。
その二人の顔がふと過ぎった瞬間、気がつけば俺はそう答えていた。これ以外の答えは、いくら考えても見つからなかっただろう。
直感に過ぎないし、何の根拠もないけど……そうとしか思えなかった。
「……そうか」
それを真正面から受け取った伊葉さんは、納得したような残念なような顔をする。
もし、見捨てるべきだというのが大人の選択だとするなら、俺の子供染みた直感回答など、大ハズレもいいとこなのだろうか。
「ちなみに、私が用意していた回答はこうだ。――『わからない』」
「え……!?」
――だが、彼が望んでいた正解の正体は、俺の回答でも俺が予想する大人の回答でもなかった。……何の意味も持たない、空白が答えだったの
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