第95話 「罪」の片鱗
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とうとう、話し声が聞こえる部屋の前にまでたどり着いた。ここは……ラウンジか。
扉に阻まれているせいで、そこまではっきりとは聞こえないが――どうやら、瀧上さんと伊葉さんが話しているらしい。あの二人、確か俺が海に誘った時からここにいたよな。まさか、あれからずっと二人で喋ってたのか?
「ほざけ! オレを一体誰だと思っている!? 松霧町を、この世界の平和を守るために戦った、瀧上凱樹だぞ! そのオレを裏切り、殺そうとした貴様が今になって、のこのこと現れた挙げ句、降伏しろなどと……覚悟は出来ているのだろうな!?」
「無論だ。お前は私の『罪』そのものであり、今やこの国の『闇』だ。易々と触れていい存在ではないことは、恐らく私が一番理解していよう。それでも、次世代へ禍根を残さぬためにも、最も穏便な形で決着を付けるために、私はここまで来たのだよ。その結果、お前に殺されようともな」
「――ふん。ならば、その作戦は失敗だったな。オレをおとしめることなど、誰にもできない。そして何より、許されない。明日のコンペティションをオレ達が制すれば、今の日本政府もこちらの力を認めざるを得まい。救芽井エレクトロニクスに代わり、四郷研究所が未来の世界を征するのだ。そうすれば――禍根とやらも、貴様のような異物の存在も、まとめて吹き飛ぶ!」
よほど立て込んでいるのか、どちらも話が止む気配がない。さっきからやたらと猛々しく轟いていた声色の正体は、どうやら瀧上さんだったらしいが……一体、伊葉さんと何があったんだ?
そういえば、昨日の夕食の時に食堂で会った時も、なんか伊葉さんのこと睨んでたような……?
「交渉決裂――と、なってしまうかな。お前の反応を、見る限りでは」
「好きに思え。言っておくが、明日のコンペティション……贔屓などすれば、貴様の命はないと思え。貴様はただ、オレがこの国のヒーローに返り咲く瞬間を見届けていればよいのだ」
「――残念、だよ。私が信じた、松霧町のヒーロー君」
すると、カツカツという足音が扉の向こうから、僅かに響いて来た。まずい、ここにいたら立ち聞きがバレる! 別に何も聞こえちゃいないけど!
慌てて踵を返し、その場を去ろうとする――が、
「おや? 一煉寺君ではないか。どうしたのかな、こんなところで」
――足音に気づくのが、遅すぎたようで。
こめかみから顎にかけて、冷や汗という名の雫を垂らす俺は、ゆっくりと振り返り……キョトン顔の、伊葉さんとご対面してしまった。
「あ、あー……えっとですね、その、なんといいますか……」
「うん?」
ヤバい。何も言い訳が浮かんで来ない!? 落ち着け一煉寺龍太、何でもいいから適当に用件を言うんだッ! 立ち聞きしてただなんて思われたら、絶対怒られる! 元総理大臣のお説教とか、想
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